県立船橋高校(千葉)の佐藤ふたばさん(3年)は、ブレスレットモデルを用いたルカ数列の拡張の研究をしている。
黒と白の2色のビーズn個と1つのホックからできている1重のブレスレットを作った時、黒ビーズ同士が隣り合わない並べ方の数は「ルカ数列」の第n項で表すことができる。ルカ数列とは初項が1、第2項が3、第n項が第n-1項と第n-2項の和で表され、第3項以降は4,7,11,18,29と続く数列だ。式で表すと、L1=1、L2=3、Ln=Ln-1+Ln-2(n≧3)となる。またnが素数pの時、第p項の数をpで割ると1余ることが知られている。
塾の講師に教わったことがきっかけ
佐藤さんは高1になる直前、塾で「ルカ数列の第 n 項 Ln は、n≧2 で『黒ビーズと白ビーズを合わせて n 個用いたホック入りの 1 重ブレスレットで、黒ビーズが隣り合わないようにする場合の数』と等しくなることが知られている」と学んだ。
その時に講師の先生から「ブレスレットの色を増やすなど、誰かこのモデルを発展させてみないか」と提案があり、佐藤さんはたまたま2重、3重にすることを思いついたという。先生が「その発想はなかった」と驚いたことをきっかけに「ブレスレットモデルを用いたルカ数列の拡張」に取り組むことにした。
ブレスレットをm重にした場合の性質を研究した。まずはn列2重のブレスレットの並べ方を考えた。黒ビーズは縦にも横にも、ホックを挟んでも隣り合わないようにするのが条件だ。回転、裏返して同じになるものも別のものと数えた。
論理を追う中での発見が「おもしろい」
佐藤さんは「すごく複雑になってしまうのかなと思った」が、n-1列のブレスレットにn列を加えると考え、n-1列とn列とで黒ビーズが隣り合うもの、隣り合わないものの組み合わせから行列を作り、並び方の総数を得る式を導き出した。
これを応用して3重の場合の式も求めた。「論理を追っていく中で、(行列と数列など)表現が違うと別の見え方をすることがある。それでも得られるものは一緒になるところがおもしろかった」と振り返った。
また、黒を含むビーズをp列m重に並べた場合、ホックの位置はpカ所に配置することができたため、並べ方はpの倍数になる。また白一色のブレスレットは必ず1つできる。つまりp列m重のビーズの並べ方の総数をpで割ると1余り、ルカ数列と同様の性質があると分かった。
数式を書くソフトも勉強
n 列 m 重のブレスレットは最終的には行列を使った表示になった。行列の勉強やテーマを深めるだけでなく、数式処理システムのマセマティカや数式を書くソフトのテフの使い方を覚えるなど勉強しなければいけないことが多かった。「やりがいがあったし、この研究をきっかけに今まで自分が知らなかったことを勉強できて楽しかった」という。
研究発表の場では、友達が増えたり、アドバイスをもらえたりした。「同じ数学好き同士とも話ができた。人とのつながりができるとますます数学が好きになるので、発表は楽しい」
「案外簡単な発想」で証明 思いがけない気付きが魅力
さらに研究を進め、他分野への応用を探るつもりだ。「今回の研究では、案外簡単な発想やモデルを使って証明することができた。こういう思いがけない面があるのが数学の魅力」
昨年12月に行われた、高校生が科学研究の成果で競う第16回学生科学チャレンジ(JSEC、朝日新聞社主催)では審査委員奨励賞を得た。(木和田志乃)