インターハイバスケットボール男子に出場する東海大学付属諏訪(長野)の張正亮(3年)は中国からやってきた留学生。学校側からスカウトを受けたわけではなく、自らが望んで日本にやってきた、全国の強豪チームの中では珍しい存在だ。

1) 自主的にトレーニングに励み、同世代にはまず見られないような分厚い胸板を手に入れた張

張いわく、中国の高校には「部活」という概念がない。部活どころか課外活動をする時間もないくらい、夜遅くまで学校で勉強するのが当たり前だという。張も毎日朝8時から夜8時ごろまで勉強漬けの学校生活を送り、バスケットボールに打ち込めるのは週末と夏冬の長期休暇だけだった。

バスケットと勉強を両方やりたい。張のそんな思いを受けた母が、バスケットボールチームのコーチである自身のつてをたどって日本の高校をリサーチし、競技のレベルや環境面でマッチしたのが東海大諏訪だった。

2016年の1月に来日。4月までの3カ月間は寮で日本語の勉強に励み、午後からはチームの練習に参加するという日々を過ごした。日本語のレッスンを週2~3回受講し、それ以外はすべて独学で勉強。4月からは日本で過ごしてきた生徒とまったく同じ高校生活をスタートさせた。スパルタ式の中国で鍛えられたせいか、「勉強は中国より楽です」。宿題は休み時間にすべて済ませるという。

前述のとおり、中国にいたころには毎日バスケットをプレーする習慣がなかった。技術的にも未熟で、練習試合のたびに足がつり、115キロあった体重はみるみる落ちた。言葉が伝わらず悲しくなったこともあったと振り返るが、それでもバスケットに打ち込めることがこの上なくうれしかった。コツコツと努力を続け、入野貴幸コーチが「3年目でようやく花開いた」とたたえる選手に成長した。

八王子戦ではアフリカからの留学生を相手に、パワープレーで堂々とわたりあった

8月5日にあった準々決勝の八王子(東京)戦では、相手のリズムを崩す大役を任された。「ちょっと緊張しました」と笑ったが、その役目を見事に果たし109-67という大勝に貢献。明日(6日)の中部大第一(愛知)戦で、マッチアップが予想されるアフリカ系留学生はさらなる強敵だ。

「自分より身長が高くで体が強くて、技術も高い。でも負けない気持ちを持って、いつもどおりゴール下で戦います」

そう抱負を語った。(文・写真 青木美帆)