満生小珀(まんしょう・こはく)さん(京都・京都精華学園高校2年)は、昨年度、1年生ながら女子バスケの高校3冠に貢献した。部員のほとんどが中学からの内部進学生という中で、高校から入った。「関東出身は私だけ」の状況から、チームに溶け込むためにどんな努力を重ねてきたか聞いた。(文・写真 白井邦彦)

「関東出身は私だけ」

インターハイ、U18日清食品トップリーグ、ウインターカップの「高校3冠」を2年連続で果たした京都精華学園は、今や高校女子バスケ界の「絶対女王」と言われている。

中高一貫の6年間で培われるチーム力が強みで、満生さんのように高校から名門の門をたたく選手は少ない。「高校からの入部は同学年で4人。関東出身は私だけです」と話す。

常に強気なプレーを意識するために「弱気は最大の敵」を座右の銘に。

「偽関西弁」でチームになじんだ

「最初は関西弁が全然わからなくて……。自分だけ標準語なのがイヤでした。でも、だんだんチームになじんでいくタイミングで関西弁にも慣れてきました。今では私も『偽』関西弁です(笑)」

半分は笑い話だが、もう半分は自身の成長にも関係がある。チームメイトとしっかりコミュニケーションを取ることで、プレーの幅も広がったからだ。

ドリブルのスキルに強み

強みは幼い頃から「ドリブルのキレを生かした1対1」だ。小学1年からバスケをはじめ、小学3年にはドリブルの楽しさに目覚めたという。「お姉ちゃんの友だちが業師(わざし)で、まねしていたらうまくなっていきました」

次第に習得した技と技を組み合わせて独自にアレンジ。満生さんの代名詞「フリースタイル」が完成していった。

ステップや目線などを駆使して相手の逆をつくドリブルは「世界でも通用したと」と話す

1on1の世界大会で準優勝

昨年のインターハイ直前には、パリで開催された1on1の国際トーナメント「THE ONE」に日本代表として出場。準優勝に輝いた。

「海外の選手は年上も多く、フィジカルでは負けていました。決勝はパワードリブルで押し切られましたから。でも、大会を通してテクニックは通用しましたし、準優勝という結果には満足しています」

自分が「生きる道」を模索して

しかし、中高一貫の同校にあって、満生さんの突出した個人能力は少し浮いてしまう。

中学時代に所属していたのは「ボールを持ったらとにかく1on1を仕掛ける」チーム。京都精華学園は「1on1を生かしながらチームプレーを求める」スタイル。似て非なるチームの中で自分が生きる道を模索し、新しい楽しさを見つけていった。

HIP HOPダンスも得意。「ドリブルのリズムにダンス経験が生かされているかも」と話す

「高校に入って面白いなと感じたのは、自分が走ったら味方からパスが来るところ。1on1がメインの中学時代にはなかった感覚でした」

新しくキャッチ&シュートのスキルを身につけた。「ジャンプシュートもあるぞってなると、相手も守備の的を絞りにくい。得意のドリブルをさらに活かせられますし、ここが高校で成長した部分だと思います」

「チームの一員になれた」

チームプレーを習得し、昨年12月のウインターカップで同校の3連覇に大きく貢献した。特に65-62の接戦となった準々決勝の鵬学園(石川)戦では25分38秒と長くコートに立ち、12得点と飛躍した。

冒頭で述べた「『偽』関西弁」が、活躍を後押しした。チームプレーに欠かせないコミュニケーションが取れた証拠だった。

キャッチからシュートまでのモーションが短い「片手シュート」の習得に挑戦中

「入学当初はみんなの輪に入れるか不安でした。でも、中学時代に私が所属していたチームと京都精華学園中学がジュニアウインターカップで対戦していて、その話で盛り上がれました。それをきっかけにみんなと仲良くなって、夏を過ぎる頃には関西弁にもなじみましたし、ちゃんとチームの一員になれた気がしました」

機会逃さず積極的に話しかけにいこう

先輩として、これから高校生活をスタートさせる新入生にアドバイスを送ってもらった。やはり「コミュニケーションを取ること」が充実させるコツだと話す。

「私はすぐ緊張して弱気になるタイプなのもあって、実はあまりコミュニケーションを取るのが得意ではありません。最初は先輩との意見交換もうまくいかなかったです。でも、話しかけてもらったらその機会を逃さず積極的にいくことを意識していました」

積極的に話したことで早くチームになじめた。その過程で習得した「偽」関西弁はコミュニケーションが取れた証拠だった。

まんしょう・こはく 2008年6月6日生まれ。坂戸市立若宮中学校卒。高校から京都精華学園高校に入学し、インターハイやウインターカップの優勝に貢献したルーキー。身長165センチ。