高校女子バスケットボールの強豪・桜花学園(愛知)は、7月に「誰でもバスケ部」を創部した。もともと特待生しか入部が認められていなかったバスケ部に新たな動きがあったのは、一般生徒からの「バスケをやりたい」という思いがきっかけだ。「誰でもバスケ部」の部員とコーチに聞いた。(文・小野哲史、写真・学校提供)

特待生じゃなくても「バスケがしたい」

桜花学園バスケットボール部は、インターハイ優勝25回、ウインターカップ優勝24回など、全国の舞台で何度も頂点に立ってきた高校女子バスケット界屈指の名門だ。掲げる目標は常に「全国制覇」。学校の「強化指定部」ゆえに、これまで特待生以外は入部を認められていなかった。

7月に創部した「誰でもバスケ部」の部員たち

しかし、中学校でバスケットボール部だった生徒や、経験はないが興味がある生徒も少なくなかった。そうした生徒たちの「バスケットをしたい」という声を若松幸雅校長らが耳にし、部を立ち上げることを決めた。

「週1回、放課後1時間」活動、ほとんどが初心者

バスケ部顧問の川島由美先生、佐藤ひかるコーチ、⽩慶花 (ペク・キョンファ)コーチが活動方法などについて会議を重ね、7月に誰でも入れる⼀般⽣徒向けのバスケットボール部、通称「誰でもバスケ部」が本格的に始動した。

現在の活動日は毎週月曜日の放課後約1時間。8月には校舎横に3人制バスケ「3x3(スリー・バイ・スリー)」仕様のコートが新設され、より実戦に近いかたちで活動できるようになっている。

佐藤コーチは「誰でもバスケ部」のコンセプトを「誰でも入れて楽しめること」と話す。「10人ほどの部員が集まり、ほとんどが初心者。『バスケットボールに触ったこともなかった』という生徒も多いです」

練習場所は新設された「3x3(スリー・バイ・スリー)」のコート。「誰でも入れて楽しめる」コンセプトの通り、指導も丁寧に行われる

マネジャーがプレイヤーになった

部員の一人が、強化指定部のバスケ部でマネジャーを務める笠井菜未さん(2年)だ。「小学1年生から中学までバスケをやってきて、第二のバスケ部ができた時に自分もまたプレーしたくなりました」と入部を決めた。

写真部に所属する大森若葉さん(2年)は、バスケは全くの未経験。「写真部でバスケ部の試合を撮影に行くことが多く、見ることには興味がありました」

大森さんが撮影した強化指定のバスケ部の写真

部員は皆兼部、初心者向けに丁寧な指導

「誰でもバスケ部」は、全部員が笠井さんや大森さんのように他の部と兼部しており、敷居の低さが魅力の一つだ。佐藤コーチや白コーチは初心者の目線まで下げ、ボールの扱い方やドリブルの仕方、シュートの打ち方など、懇切丁寧に指導を行っている。

佐藤コーチは「経験の有無でレベルの差はありますし、週1回の活動なので急成長するのは難しい。しかし、生徒たちはそれぞれにレベルが上がっています」と成長を感じている。大森さんは「優しく丁寧に教えてくださって、楽しんでバスケをやれています」と笑顔を浮かべる。

互いに教え合い「みんなでやれるって楽しい」

部員たちは活動する中で、新たな発見や学ぶことも多いという。「強化指定部のバスケ部では、みんなで目標を達成できた時などは、他では味わえない喜びがあります。一方で『誰でもバスケ部』は初心者の人もいて、いろいろお互いに教え合える。コミュニケーションを取りつつ、みんなでやれるのは楽しいです」(笠井さん)

左から笠井さん、大森さん、佐藤コーチ

初めてバスケに触れた大森さんは「自分でプレーしてみると、シュートはなかなか入らないし、パスもすぐに取られてしまってうまくいかないことが多いです。見ているだけでは感じられないバスケの楽しさや難しさを知りました」と話し、兼部先の写真部に生かせる視点を得たとほほ笑む。

コーチも「バスケを楽しむ」原点を再確認

佐藤コーチも、「バスケ未経験の生徒と接することで、きめ細やかな指導の重要性を感じ、自分自身の振り返りになります」と顧みる。加えて「バスケットを楽しむことは、強化指定部も『誰でもバスケ部』も変わらない。そんなことを再確認させてもらっています」と、指導者としての気づきにもなっている。

来年度はJBAへの選手登録をして、強化指定バスケ部が出場しない大会への出場を目指していくという。大森さんが「気軽に体を動かしたいという人でも、どんどん増えてほしい」と話す。「誰でもバスケ部」では引き続き、部員を募集中だ。