朝、登校前になるといつもおなかが痛くなる。試験や試合の前は決まっておなかを壊す。こんな症状に悩んでいる人は、もしかしたら過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)かもしれない。思春期に発症しやすいこの病気の原因や対処法を、久里浜医療センター(神奈川)の水上健先生に聞いた。 (平野さゆみ)

目を閉じて深呼吸を

過敏性腸症候群は、腸に炎症や腫瘍といった異常がないのに、腹痛を伴う便秘や下痢を繰り返す病気だ。「下痢型」「便秘型」、便秘と下痢を繰り返す「混合型」に大別される。

下痢型の約4割はストレスが原因だ。試験前や、電車内などトイレに行けない状況になるとおなかが痛くなる人はこのタイプ。一度こうした経験をすると「また同じことが起こるのでは」と不安になり、再び下痢を引き起こすという悪循環に陥ってしまう。「もしも便が出そうになったら、1分ほど目を閉じて深呼吸してください。腸の動きが止まるはずです。そして『自分はこういう体質なのだから仕方がない』と割り切ること。そう思うだけで治ってしまう人が、実は多いんです」

ストレスは感じていないが、食事をすると下痢をする場合は胆汁性下痢症の可能性がある。体内で下剤の役目をする胆汁が腸に過剰に流れ込んで起こる。このタイプの人は、食後にしっかり便を出し切ることが大切だ。

運動やマッサージも有効

便秘型の原因の大半は運動不足なので、ラジオ体操を毎日行うだけでも改善する。また、起床前に布団の中で両膝を立て、恥骨から下腹にかけて両手で揺らすように1分ほどマッサージするのもよい。そして、毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつけよう。

便秘と下痢を繰り返す混合型は、運動不足と腸の形によるもの。「日本人の腸の形は複雑で便がつかえやすいため、腸が水分を増やして便を流し出そうとします。便が出ると水分が一気に排出され、便秘と下痢が交互に起こる。毎日運動して便がつかえるのを防ぎましょう」

食事にも注意

おなかのトラブルを避けるためには、バランスの良い食事も大切だ。ただし、牛乳や果物など特定の食品を取ると下痢をする場合は、その食品の成分が腸内で過剰に発酵していると考えられるので控えよう。これらの対処法で症状が改善しなければ、消化器内科を受診しよう。ストレスが原因の場合は心療内科でもよい。

 
 
水上健さん
(久里浜医療センター内視鏡部長)
みずかみ・たけし 医学博士。専門は大腸内視鏡検査や過敏性腸症候群、便秘の治療。