高校生に必要な睡眠時間は? 医学的に良い睡眠のとり方とメカニズムについて、睡眠科学の第一人者・櫻井武先生(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構)に聞きました。(青木美帆)

高校生が必要な睡眠時間は平均8~9時間

よく「深い睡眠をとりたい」という人がいますが、実は睡眠は深ければよいというものではありません。大切なのは、寝入りばなから起きるまでの流れが正しくデザインされた眠りをとることです。

睡眠には「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」の2種類があり、約90分前後で2つの睡眠が交互に現れます。この一つのサイクルを「睡眠周期」と呼びます。ノンレム睡眠には深さがあり、睡眠周期を繰り返していくうちに徐々に浅くなっていきます。最初の周期で深く眠り、徐々に眠りが浅くなり、必要な睡眠量を満たして目が覚める。これがよい睡眠の構築です。必要な睡眠量は、高校生年代だと、個人差がありますが、平均8~9時間ほどといわれています。

90分単位で睡眠時間を計画するのは間違い?

長い昼寝のあとに頭がぼんやりするのは、このデザインができていない状態で目を覚ましてしまうから。一度深い睡眠に入ってしまうと、正しい睡眠を構築するには昼寝の時間くらいでは足りないんです。

睡眠周期について中途半端な情報が伝わったからか、「睡眠時間は90分(1.5時間)単位でとるといい」という説があるようですが、これは必ずしも正しくありません。というのも、睡眠周期には個人差が非常に大きく、日によってもまちまちだからです。「明日早く起きなければいけない。90分早く起きよう」と考えるくらいだったら、睡眠不足を少なくするためにギリギリまで寝ていたほうがいいですよ。

さくらい・たけし

筑波大学医学医療系教授。筑波大学大学院医学研究科修了。睡眠を含む脳の機能やメカニズムを解き明かしている。

櫻井武先生