あなたの近くに、朝から晩まで、食事や睡眠時間をも惜しんでネットゲームに熱中している人はいないだろうか。ゲームへの依存が高まれば日常生活に支障を来たす恐れがある。(青木美帆)

ゲーム依存は「病気」

単なる「ゲーム好き」としてとらえられていたが、世界保健機関(WHO)はゲーム依存を「病気」として扱う見通しだ。病名は「ゲーム障害」。ネットゲームへの依存が高まり、日常生活や家庭環境、健康に支障をきたした状態を指す。インターネット依存の研究・治療を専門とする久里浜医療センターの樋口進院長は、こう説明する。「ゲームの中でもオンラインゲーム、特にグループで行うものの依存性は非常に高いです。依存というのは『気持ちいい』『楽しい』という『多幸感』を出発点としているのですが、画面の向こうの仲間と団結し、与えられた役割を果たすことで、多幸感がますます助長するのです」

86時間ゲームを続け死亡例も

仲間との団結や役割に対する献身は現実社会でも実現できるものだが、リアルなクエストはそう簡単には攻略できない。「現実社会で自信が持てない状況にいると、バーチャルのほうが心地よくなるというケースは多く認められます」と樋口先生は話す。
 韓国では2002年、86時間飲まず食わずでゲームを続けた24歳の男性が死亡するという事件が発生。膨大な課金を苦にした自殺者も現れた。インターネット依存で樋口先生のもとを訪れる患者も、その実に7割が10代で、ほぼ全員がゲーム依存だという。「ディスプレーの前から動かなくなることによる体力低下や睡眠障害が起きたり、ゲームをやめさせようとする家族に暴力をふるったりするケースもあります」(樋口先生)。

 
樋口進さん
(久里浜医療センター院長)
ひぐち・すすむ 医学博士。インターネットを含む依存症の予防・治療・研究の第一人者。