忙しい毎日を過ごす高校生。「睡眠時間が足りていない」「徹夜で勉強してしまった」など、適切に睡眠をとらないと心身の問題を引き起こしてしまう危険性がある。どんなことに気をつければよいか、睡眠を研究している櫻井武先生に聞いた。 (青木美帆)

平均8~9時間必要

睡眠障害とは睡眠に何らかの問題があり、「大事な授業やテストで寝てしまう」「夜眠りたくても眠れない」など日常生活に支障が出ている状態のこと。不眠症や過眠症、睡眠時遊行症(夢遊病)やリズム障害など、睡眠障害に分類される病気はさまざまだ。

日本人の4、5人に1人は睡眠になんらかの問題を抱えていると言われている。櫻井先生は特に、高校生は、本人は自覚していないが慢性的な睡眠不足の状態である場合が多いという。「個人差はありますが、高校生年代は平均で8時間から9時間ほどの睡眠が必要。しかし、忙しくてその時間をとれないまま、『眠いのは当たり前』と考えているからです」

大事なのは起きる時間

睡眠の状態を改善するうえで重要な方法の1つが、睡眠の習慣(睡眠衛生)を整えること。

私たちの体内時計は「眠れる時間帯」と「眠れない時間帯」を決めている。「今日は早く寝よう」と思ってもなかなか寝付けないのはこのため。体内時計は起床時に光を浴びることで時刻を合わせているが、最長1時間しか体内時計のズレを解消できない。土日に昼まで寝ると2時間以上のずれが生じるが、それを直ちに月曜日にリセットすることはできないことになる。

早く寝たいのならば、まずは寝たい時間の約16時間前に起き、体内時計を正しく動かす習慣をつけるとよい。「週末に『寝だめ』をするとますます体内時計が狂い、リズム障害におちいりかねません。休日でもなるべく同じ時刻に起き、その分早く寝るようにしましょう」

夕方に浴びる光に注意

体内時計を狂わせる要因は他にもある。夕方以降の「光」だ。「朝の光は体内時計を前にずらすことでリセットしますが、夕方の光は体内時計を後ろにずらし、眠くなる時間を遅らせます。必要以上に明るい光を浴びないほうがいいでしょう」。布団に入ったらスマホは触らない、夕方以降はスマホの明度や彩度を落とす、自室の照明を白でなく赤いものにするなど、工夫してみよう。

 
 
さくらい・たけし
筑波大学医学医療系教授。筑波大学大学院医学研究科修了。睡眠を含む脳の機能やメカニズムを解き明かしている。