米英仏3カ国は4月14日未明(現地時間)、シリアのアサド政権が化学兵器で市民を殺傷したとして、首都ダマスカス近郊や中部ホムスの化学兵器関連施設を、巡航ミサイル「トマホーク」など100発以上で攻撃した。35万人以上が犠牲になり、「今世紀最悪の人道危機」といわれるシリア内戦の出口は見えない。 (15面に関連記事)
米英仏がアサド政権を攻撃
攻撃は地中海や紅海に展開する米海軍艦船や原子力潜水艦がトマホークを発射。空爆には遠距離から精密攻撃ができるB1戦略爆撃機が加わった。英軍はトーネード戦闘機が空中発射型の巡航ミサイルで、フランス軍はフリゲート艦やミラージュ戦闘機で攻撃した。
トランプ米大統領は化学兵器使用を「人間の行いではない」と非難し、正当性を強調。一方、アサド大統領は「(化学兵器使用は)でっち上げ」とし、アサド政権を支援するロシアも「国連憲章や国際法に反している」と、米英仏による攻撃を批判した。
政権をロシアなど支援
内戦当事者はアサド政権、反体制派、過激派組織、クルド人勢力に大別され、ロシアとイランの支援を受けるアサド政権は都市部を中心に国土の半分以上を支配している。
一時は国土の約4割を支配した過激派組織「イスラム国(IS)」は米軍主導の有志連合の空爆やクルド人勢力による掃討作戦で拠点を失い、代わってクルド人勢力が国土の約3分の1を支配する。反体制派は「反アサド」で連携してきた過激派組織と決裂し、退潮が著しい。
国連主導の和平は進まず
今回の米英仏による攻撃は対象が限定されており、政権優位の内戦の構図は変わらない。国連主導の和平協議もアサド大統領存続を主張する政権派と、同大統領退陣を主張する反体制派がともに譲らず、議論に入れない状態が続く。
米英仏はアサド政権が化学兵器を使用したと断定するが、決定的な証拠は開示していない。中東外交筋は「これはシリアの支配権をめぐる米欧とロシアの情報戦だ」と指摘しており、米ロなどの介入で和平の先行きはまったく見通せない状況だ。