憧れの職業や将来の夢。身近な人に話して「向いてないよ」と否定されたら、ショックですよね。20歳で学習塾を創業し、4000人以上の生徒を直接指導してきた石田勝紀さんに、親や先生に夢を否定された読者の悩み相談に答えてもらいました。
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【お悩み】「憧れ」だけで将来の夢を決めてもいい?
将来の夢は、小学校の先生です。小学校6年生の時の担任の先生に憧れて、志すようになりました。しかし、親からは「教師以外の道を見なさい」と言われ、顧問の先生からは「違う仕事のほうが似合いそうだけどね」と、やんわり教師じゃないほうがいいと言われました。親からはずっと言われていましたが、顧問の先生からも言われ、「自分には向いていないんじゃないか」と考えるようになりました。
教師になりたいけれど向いていないかも…(写真はイメージ)私は、とにかくネガティブ思考で勝手に落ち込む時が多く、緊張しがちです。しかし、応援団長をしたり、陸上部の副部長をして県大会に出場したりと、自分の殻を自分で破れるよう努力をしてきたつもりです。「教師になるために」といつも考え行動しています。
私は「憧れ」からですが、他の教師を目指している友達は「教えるのが楽しい」「子供に無駄な時間を過ごしてほしくない」「子どもたちが成長していく姿を見届けたい」などなんです。私の「憧れ」という理由は、教師になるには不純な動機な気がします。「憧れ」で将来の夢を決めるのは幼稚でしょうか?(カピバラ・中学3年女子)
目標は「憧れ」から始まる
こんにちは。石田勝紀です。とても真っすぐで真面目な質問ですね。最初にお伝えしたいのは、「憧れ」から将来の夢を持つのは、決して子どもっぽくも不純でもないということです。むしろ、人が何かを目指す最初のきっかけは、たいてい「憧れ」から始まるものです。
憧れとは「自分もあんな風になりたい」という心の奥底のふわっとした光です。そのわずかな光があるからこそ、そこから頑張る力が生まれてくるのです。
向き不向きはやってみないとわからない
憧れはスタートであり、ゴールではありません。多くの人が「向いているかどうか」を早い時期に決めようとしますが、実はそれはやってみないと分からないものです。教師の仕事に限らず、医師でも看護師でも、実際に現場を体験して初めて「自分に合っている」「ここが苦手」といった感覚が得られます。
ですから、今の時点で「憧れだから不純」と自分を責める必要は全くありません。大切なのは、憧れの気持ちをスタートにしながら、「自分に合っているかどうか」を確かめる行動をとることです。
身近にいる「ドリームキラー」
親や先生の意見も、あなたを否定したいわけではなく、「他の可能性も見てほしい」という願いがあるのだと思います。しかし、ドリームキラー(夢を壊す人)という言葉があります。身近であればあるほど、ドリームキラーになりやすいと言われています。その代表が、親、先生です。
しかし、そういう人も、人の憧れや夢を壊すために言っているわけではないのですが、結果として、「向いていない」「才能ないと思う」など、ひどい言葉を言ってしまうのはよくあります。
どのような理論的な理由があってそのような発言をしているのかというと、何もないのです。ある意味、適当に言っているのです。ですから、真面目に聞く必要はないのです。
参考になる意見だけを受け取る
ただ、中には参考になる「意見」がある場合があるので、それは受け取ります。例えば、「緊張しやすいから教師に向かない」と言われたとしたら、「だったら、これから、緊張をなくすために場数を踏んでいこう!」と考えればいいのです。つまり、そのような意見も自分の憧れに向かって進むための栄養として使ってしまうのです。
「続けられる情熱」があるか
職業に向いているかどうかは、才能よりも「続けられる情熱」があるかで決まります。医師でも看護師でも教師でも、最初は下手だった人が、情熱と努力で本当に良い先生、良い医療者になっていく例はたくさんあります。ノーベル賞を取ったiPS細胞の山中伸弥教授は臨床医の時は「邪魔中(じゃまなか)」と言われ才能がないと言われ続けていたそうです。いかに周りは見る目がないかというのが分かると思います。
もしカピバラさんが「教師になるために」と行動しているなら、それはすでに憧れを超えています。ただの夢想ではなく、"意志"になっています。意志を持って動いている人は、たとえ遠回りしても必ず成長しますので、その憧れを持ち続けてください。
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いしだ・かつのり 教育者。教育デザインラボ代表理事。著書執筆・講演活動を通じて、学力向上のノウハウ、社会で活用できるスキルやマインドの習得法を伝える。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』(集英社)など著書多数。