高校3年生の中には、大学受験に向けた勉強を頑張っている人もいる時期ですね。20歳で学習塾を創業し、4000人以上の生徒を直接指導してきた石田勝紀さんに、読者から届いた「長時間勉強しても成果が感じられない」というお悩み相談に答えてもらいました。
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【お悩み】長時間勉強しても成果が感じられない
大学受験に向けて勉強をしています。ですが、10時間勉強しても、「した気」になりません。集中できておらず、濃度の薄い学習だからでしょうか……?
国数英、社(地理)、理(物理・化学)全てを勉強しています。土曜日は10時間勉強する日が多く、以下のようなスケジュールで勉強しています。
- 6時〜8時 地理・現代文・情報
- 9時〜11時 数学
- 14時〜16時 化学
- 16時〜19時 通塾(英語・物理)
- 21時〜22時 英語
でも、「数学は得意だから」と難しい問題に挑戦すると1問に時間がかかり、進んでいると感じられません。物理は苦手すぎて、わかる問題がほとんどないです。成長が感じられずに悩んでいます。(R・高校3年)

「10時間勉強」自体が大きな価値
こんにちは。石田勝紀です。とても真剣に取り組んでいる姿勢が伝わってきました。高3のこの時期に土曜に10時間勉強する、その意志と努力自体が大きな価値を持っています。ただし、「勉強した気がしない」「成長を感じられない」という悩みは、決して珍しくなく、多くの受験生が直面する壁でもあります。そこで具体的に回答していきますので、今後の参考にしてくださいね。
【1】勉強時間よりも「濃度」に注目
勉強は、「量」よりも「濃度」に注目しましょう。10時間勉強しても成果を感じられないのは、「勉強時間=成果」とは限らないからです。勉強の効果は「時間」よりも「集中度」と「到達目標の設定」によって決まります。
例えば、数学で難問に取り組み1問に3時間かけるのは、決して無駄ではありませんが、その過程で「なぜ解けなかったのか」「何がわかればこの問題が解けたのか?」と振り返らないまま時間だけが過ぎてしまうと、「進んでいない」と感じやすくなります。時間を区切り、「この範囲の問題を今日のゴールにする」と小さな達成を積み重ねるのが重要です。

【2】苦手科目は「できるところ」から積み上げる
苦手科目は「できるところ」から積み上げてください。物理が「ほとんどわからない」とのことですが、苦手科目は最初からすべて理解しようとせず、「教科書レベルの基礎問題だけ」「典型パターンの中の1問だけ」と小さく区切ってみてください。1問が解けるだけでも「できる」に変わり、その積み重ねがやがて自信につながります。
逆に、基礎を飛ばして難問に挑戦すると「できない」感覚ばかりが増幅し、自己効力感を下げてしまいます。苦手科目は「正答率の高い問題」から攻略し、「できる問題集を1冊やり込む」方が効果的です。
【3】得意科目は成果を可視化
「得意科目」は成果を可視化しましょう。数学のような得意科目は、成長を実感できる設計が必要です。
例えば、「問題演習ノート」を作り、1問ごとに「理解度」「再現性(何回間違えたか★マークをつけるなど)」「次回解くときのポイント(これがわかればこの問題解けたという部分)」を書き残すと、自分の成長が「見える化」されます。得意科目ほど「成長を感じにくい」ので、見える形にしてみてください。

【4】「振り返りタイム」を設ける
勉強の最後に15分だけ「今日の成果」を書き出してください。「何を新しく理解したか」「どの分野で進歩したか」を言語化するのは、自己効力感を高める強力な方法です。勉強は積み重ね型ですから、振り返りをしないと「進んでいない」と錯覚しがちです。
【5】「集中のリズム」をつくる
長時間机に向かっていても、集中が途切れている時間が長いと「薄い学習」になります。「ポモドーロ法」という25分集中して5分休憩する勉強法などでリズムをつけると、学習の濃度が上がります。大切なのは「質の高い90分」を何本積み上げられるか、という視点です。
「成長の見える化」がカギ
「やっているのに成長を感じない」と悩むのは、自分が本気で学びに向き合っている証拠です。その姿勢自体がすでに大きな力であり、今後の成長につながります。勉強は量より質、そして「成果の見える化」がカギになります。小さな達成を積み重ね、自分の進歩を振り返る習慣を持つと、確実に手応えは生まれてきます。淡々とそれを積み重ねてください。必ず結果につながります。応援しています!
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いしだ・かつのり 教育者。教育デザインラボ代表理事。著書執筆・講演活動を通じて、学力向上のノウハウ、社会で活用できるスキルやマインドの習得法を伝える。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』(集英社)など著書多数。