「スマホを触ってしまう」「片付けを始めてしまう」……勉強をやらなきゃいけないのに、なかなか机に向かえない。そんな経験、誰でもあるのでは。20歳で学習塾を創業し、4000人以上の生徒を直接指導してきた石田勝紀さんに、読者から寄せられた「勉強に取り掛かるまでに時間がかかってしまう」という悩みに答えてもらいました。

【お悩み】勉強になかなか取り掛かれない

「勉強しないと」と頭では分かっていても、スマホを触ったり本を読んだり部屋を片付けたりして、勉強に取り掛かるまでに時間がかかってしまいます。一通りやり終えて「よし、勉強をしよう」と思っても、もう時間が残っていないことがよくあります。

部活が忙しく、平日は家で30分くらい、休日でも2時間ほどしか勉強できません。さらに、取り掛かるまでに30分〜1時間かかってしまい、ますます時間がなくなってしまいます。

学校の教室や図書室で勉強することもありますが、友達と話してしまい集中できません。どうしたらすぐに勉強を始められるようになりますか?(りり・高校2年女子)

「やりたくない」気持ち、どう乗り越えるか

こんにちは。石田勝紀です。勉強に取りかかるまでに時間がかかり、結果的にやる気を失ってしまうのは、誰にでもよくあります。

無意識に「楽しいこと」を優先してしまう(写真はイメージ)

人の行動は、心の状態を反映していると言われています。つまり、本質的には「勉強をやりたくない」という気持ちが強く、勉強を後回しにしてしまうのです。携帯、部活、友達との会話など、高校時代にはどうしても勉強よりも楽しいことが多いですよね。だから無意識のうちに、楽しいことが優先されてしまうのです。

では、「やりたくない勉強」をどうすればやれるようになるのでしょうか。二つのテクニックをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

【1】スモールステップを作る

勉強を始めるまでのハードルを下げるために、「勉強に関係はするが勉強ではないこと」から始めます。例えば、「机に教科書とノートを開くだけの準備をする」のは効果的です。勉強はやりたくないけども、勉強の準備であればやる可能性は上がります。

「スモールステップ」を作ろう 

「スモールステップの原理」と言われており、大きな目標を達成するためには、小さく分割したステップから始めると有効である考え方です。最初の一歩を小さくすると、心理的な抵抗感が減り、行動に移しやすくなります。

この方法は、大人も気乗りしないときによく使っています。さらに、最初の行動の歯車を回すと、脳内でやる気や集中力が高まり、作業がスムーズに進むようになる「作業興奮」が起こり、その後続く可能性が上がります。

【2】自分に合った時間と場所を調べる

りりさんは、もしかしたら「勉強しないと」と思ったときの時間帯は、勉強したいときではないのかもしれません。または、場所が勉強にふさわしくないのかもしれません。

人間にはやってもいい時間帯、やりたくなる場所があります。カフェに入って、どの席でもいいというわけではなく、自分が落ち着ける席を選びますよね。カフェはいつでもいいわけではなく、落ち着きたいとき、何か飲みたいときに入ります。このように、勉強もやってもいい時間帯と場所があります。

勉強場所を工夫してみて 

しかも、「数学ならこの時間帯でこの場所」「英語ならこの時間帯で」と、科目によっても場所と異なるのが一般的です。英語も単語を覚えるだけなら電車の中が良かったりします。

時間と場所が決まると、心理学で言う「条件付け」が起こります。つまり、「その場にいけば自動的にやりたくなる」というものです。自分にふさわしい、時間帯と場所をまずは調べてみてください。

勉強が楽しくなる瞬間がくるよ

以上のようなことを試しているうちに、だんだんと勉強するようになります。すると自分の能力が上がり、勉強そのものに興味がでてくる瞬間が出てきます。そこまでたどり着ければ、あとは、水平飛行で安定し、自動的に勉強するようになっていきます。

 
石田勝紀さん 
いしだ・かつのり 教育者。教育デザインラボ代表理事。著書執筆・講演活動を通じて、学力向上のノウハウ、社会で活用できるスキルやマインドの習得法を伝える。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば
』(集英社)など著書多数

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