教員の長時間労働が社会問題になっている。「テストの採点時間を短縮できたら、労働時間も削減できるのではないか」と考えた小野高校(兵庫)の3年生4人が、「国語の記述問題のAIによる自動採点システム」の開発に挑んだ。代表して、花房良信さんに聞いた。
「教員の長時間労働」を解決したい
花房さんたちは、国語の記述式問題に対応した、AIによる自動採点システムの開発に挑戦した。2年生の5月から14カ月間、探究学習の一環として取り組んだ。
近年、日本の教員の労働時間の長さが問題視されている。「その中で、テストの採点時間の長さに着目しました。自動採点システムがあれば、教員の労働時間の削減に貢献できると思ったんです。大人数で行う試験の採点で利用するだけでなく、生徒が家庭学習で記述式演習の答え合わせをする際にも手軽に使えることも目指しました」
国語の記述問題は、「論理的な内容から心理的な内容までを答える必要があり、他の科目の採点よりも難易度が高い」と考えた。「国語の記述問題で自動採点システムを採用できたら、他の科目にも容易に応用できると思ったんです」
100問約1.3秒で採点
まずは生徒560人に、解答字数が30~40字程度の問題4問に答えてもらった。採点のポイントをAIに覚えさせて判断する「ルールベース型AI」と、すでに学んだ知識を応用して採点する「転移学習を用いた生成AI」の2種類を用意し、国語の先生の採点と比べた。
ルールベース型AIと転移学習を用いた生成AIは、採点の正確さの点で人間を上回った。「100問採点させた結果、100問あたりの採点時間は ルールベース型AIで1.3秒、他方でも200秒でした。。教員が100問採点するより、20分ほど速く採点を行えました」
仲間と話し合いシステムを作成
初めて扱うシステムやプログラムの仕組みを理解するため、方法や手段を一から調べながら試行錯誤を重ねた。「知識や技術を身に付けていくのが大変でしたが、書籍を読み込み独学で学び、仲間と話し合いながら、何とかシステムを完成させられました」
現状は臨機応変な採点が難しいなどの問題が残っている。「今後は実験データを増やしていき、AIがより正確に採点できるように改良したいです。精度を高めて、教員の労働時間を減らし、家庭学習の質の向上にもつなげたいです」
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【探究で何が身についた?】簡潔にまとめる力
開発中は、メンバー自身が「記述式問題に対する学力」を上げるために奮闘しました。記述式問題を自習する場合、不正解の理由が分からなかったり、部分点を付けるのが難しかったりするので、勉強しにくいです。自動採点システムを作るために、メンバー自身が記述式問題を解くコツを学んでいきました。
その中で、受験勉強をするうえで、身に付けておきたい力が伸びました。論理的に筋道を立て、それらを簡潔にまとめる力が付くとともに、その重要性に気づけました。


















