目立つ人の意見だけを聞く「不平等なリーダー」とは、どうコミュニケーションすれば、良い方向に向かうのでしょうか。実際に高校生から寄せられた悩みを例にして、リーダーシップ論に詳しい日向野幹也先生(共立女子大学客員教授)にアドバイスしてもらいました。(木和田志乃)
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【悩み】リーダーがメンバーを不平等に扱ってくる
体育祭の出場競技を決めるとき、クラスの体育祭担当が勝手に決めてきました。先生がいなかったのをいいことに、クラスの中で目立つ人の意見ばかり取り入れて、初めからおとなしい人の意見を聞く気はなかったんです。自分の出場競技を勝手に決められたことにもやもやします……。(こたけ・高校1年)
「全員の意見を聞く」プロセスが欠落
「勝手に決められた」という思いは、単なる不満ではない。進め方に大きな課題がある可能性がある。日向野先生は「リーダーには、自分の意見だけで進めてしまうという問題が起きがちです」と指摘する。特に発言力のある生徒の意見ばかりを取り入れがちだ。
体育祭担当という立場にあると、「自分たちで決めていい」と思い込んだり、「早く決めないといけない」と焦って、全員の意見を聞くプロセスが抜け落ちたりしてしまう場合もある。「みんなの意見を聞いたつもりでも、目立つ生徒や自分と仲のいい生徒とだけ話していれば、全体を把握したとは言えません」
不満があったら声を上げよう
全員で話し合う場では、おとなしい生徒は発言しづらくなりがちだ。だが、不満を言葉にしないままでは、気付いてもらえない。「どんなに気配りのできる人でも、言われなければ分からない場合があります。『誰も困っていない』と思い込んでしまうかもしれません」
気になる点があれば、一人でも伝える勇気が大切だ。直接話しにくければ、話しやすい友人に代わりに伝えてもらう方法もある。他の担当者や学級委員など、役割を持っている人に頼ってもよい。

クラスのメンバーは「対等」
一人で決める力よりも周囲の意見を引き出す姿勢がリーダーには求められる。「手続きを踏んでいない状態で『文句がなかったから決定とみなす』とはならないのです」。特におとなしい人にこそ声をかけて全体に意見を聞き、丁寧に共有していれば、希望が通らなかったとしても納得感は残る。
高校のクラスでは、学年も立場も基本的に対等である。「役割がある人が強い権限を持つわけではないので、共有の姿勢がなければ何も進みません」。全員が納得して進める雰囲気づくりを意識したい。
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日向野幹也先生
ひがの・みきなり 早稲田大学グローバルエデュケーションセンター教授などを経て、共立女子大学客員教授。東京大学社会科学研究科経済政策専攻第二種博士課程修了。 教育現場におけるリーダーシップ開発を専門とする。著書に『高校生からのリーダーシップ入門』(ちくまプリマー新書)など。