私は生まれつき耳が聞こえません。人工内耳という機器を使い、音を聞いています。難聴である私自身の体験を通して、「心のバリアフリー」の大切さを伝えます。(高校生記者・なつくる=1年)
難聴で人工内耳を使って生活
私は人工内耳を使って、周囲の音を聞いています。手話ではなく、口話で生活しています。会話は静かな場所だと聞こえますが、騒がしい休み時間の教室などだと聞こえづらいです。口の動きも見て理解しようとするので、常に集中しています。

電車が事故で止まった際、周囲がガヤガヤと騒がしかったため、私は駅員さんのアナウンスが聞こえませんでした。何が起きているのか分からず、とても不安でした。地震などの災害が起きた場面を想像すると、さらに恐怖を感じます。
「助けてほしい」と伝えるのが不安
今何が起きているのか、どうしたらよいのか指示があれば動けます。メモで状況を伝えてもらえるだけで安心できるので、周りに助けを求めたいのです。
ですが、アクシデントが起きると、周囲の人も自分のことで精いっぱいなので、何かをお願いすることに申し訳なさを感じます。
もし聞いた時に、「こっちは忙しいのに……」と嫌な顔をされたり、暴言を吐かれたりしてしまったらどうしよう、と不安に思ってしまいます。なので、自分だけで解決しようと思いがちです。

「心のバリアフリー」が大切
バリアフリーと聞くと「スロープをつける」など設備面が思い浮かびがちですが、本当に必要なのは「人の気持ち」、つまり心の中にある壁を取り払うバリアフリーだと思います。
私は人工内耳を付けているので、「障がい者」だと分かりやすい見た目をしています。クラス替えの直後はクラスメートが不思議そうな顔で見てくるし、あまり話しかけてきてくれず、「障がい者は自分たちとは違う」と線引きされているように感じます。
しかし、障がい者も他の人と同じように、普通に生活したいんです。壁を取り払えるよう、私自身積極的に話しかけるように頑張っています。
今では周りも理解してくれて、友人や先生がゆっくりはっきり話してくれるおかげで、学校生活ではとても助けられています。
「必要な支援」「不要な支援」がある
一方で、私が自分でできることなのに、クラスメートが代わりにやってしまう時があります。
例えば、美術などの授業で先生の指示が聞こえずに、何をすれば良いかわからないでいると、作品作りを代わりに一から十までやってくれる子がいました。親切心から助けてくれて心づかいはありがたいけれど、指示内容を教えていただけたほうが、私も作品作りに関われるのでうれしいです。
その時は、「手伝ってもらっているのに断るなんて……」と思い何も言えず、むしろ「ありがとう!」と伝えました。断ると友達との関係が悪くなる場合もあるので、勇気や覚悟が必要なのです。
お互いさまと思える関係を作りたい
助けが当人にとっては不要な場合もあります。何をしてもらえたら助かるのか、私たち障がい者自身が勇気を出して具体的に発信すれば、誰もが安心して暮らせる社会を実現する一歩につながると思うのです。
一方で、障がいがない人は「助けてあげる」という気持ちではなく、「困ったときはお互いさま」と思える関係が広がれば、社会はもっとやさしくなると信じています。
- なつくる 東京都在住。ダンス部、新聞委員会所属。体を動かすのとゴロゴロするの二刀流。面白いことにとことん興味を持つENFP。食べる時と寝ている時が一番幸せ。