自分に合った大学を選びたいけれど、どうすれば「正解」を選べるのか、迷う人が大多数です。進路選びで後悔しないために、知っておきたい基本の視点を、大学ジャーナリストの石渡嶺司さんに聞きました。(安永美穂)

収入面では「大卒」の方が得する

―高校生から「高校の進路指導では、先生から『将来のことを考えて取りあえず大学に行っておいた方がよい』と言われました。なぜ大学に行った方がよいのでしょうか」と質問が寄せられました。

家庭の事情や自身の希望などにより、大学に行かずに高卒や専門学校卒で社会に出るのも生き方の選択肢の一つであり、尊重されるべきものです。

ミュージシャンや俳優、スポーツ選手、動画配信者などの才能・実力が問われる仕事で活躍する人や、自分でビジネスを始める起業家、会社には所属せずに働く自営業や個人事業主の中には、大卒でなくても高い収入を得ている人は一定数います。

―大学に行かなくていいと発言したインフルエンサーもいますね。

しかし、全体の平均値を取ると、大卒の人の方が高卒や専門学校卒の人よりも高い収入を得やすいのが現実です。企業や公務員などの採用においては、多くの場合、「大卒」「高卒」といった学歴によって給与や昇進のペース、就ける業務の内容などが決まっており、「大卒」の人の方が「高卒」の人よりも高い能力や広い視野を持っていると見なされて優遇される仕組みとなっています。

大卒の方が収入を得やすいのが現実

世の中の人の多くは「凡人」。会社員や公務員など何らかの組織に所属する形でキャリアをスタートさせるのが一般的です。そのことを考慮すると、大学に進学しておくと、将来の収入面では有利になりやすいです。

「自分に100%合う大学」はない

―「自分に合った大学がわからない」と悩む高校生も多いです。

大前提として、どんな人にも「100%合う」大学は存在しません。魅力を感じた大学に入学したとしても、「つまらない」と感じる授業があったり、ゼミやサークルに気が合わない人がいたりするものです。

ただ、卒業して社会に出てみると、「つまらない」と感じた授業で学んだ内容が役に立ったり、在学中は気が合わないと思っていた人との交流が長く続いたりする場合があるのも、人生の面白いところです。

「100%合う大学」は存在しない(写真はイメージ)

ですから、「自分に100%合う大学」を探そうとするのではなく、漠然とでもよいので「勉強してみたい内容や将来のキャリアの方向性」を考え、大学・学部・学科がどの程度合いそうかを検討してみるのをおすすめします。

「なぜ学びたい?」志望理由は明確か?

―大学選びで意識すべきポイントは?

自分の中で「なぜ学びたいのか、志望理由が明確な大学」を選ぶのが重要です。「自分が学びたい内容を学べる大学か」「現実的に入試を突破できる可能性があるのか」も意識しておけるとよいでしょう。

医師や看護師、弁護士、公認会計士などの「専門職」を目指したい場合は、必要な科目が学べる学部・学科がある大学を選ぶ必要があります。

―近年、増えている総合型選抜や学校推薦型選抜では、志望理由が非常に重視されますよね。

経済学部の面接試験を受けるとしましょう。「経済やビジネスに関連するどんな本を読んできたか? 感想は?」などと深堀りした質問をされて、スラスラ答えられないとマズい。「なんとなく興味がある」程度では、面接官が納得できるような受け答えができず、合格するのはしんどいです。

高校1・2年生の皆さんであれば、すぐには答えられなくてもかまいませんが、「この学部・学科に関連する内容なら、入門書を読んだり、ニュースをチェックしたりするのは苦にならない」と思える学部・学科は何かを考えておくと、大学選びにおいて役立つはずです。

石渡嶺司さん

いしわたり・れいじ。大学ジャーナリスト。東洋大学社会学部卒。編集プロダクションなどを経て、2003年から大学・就活を主なテーマに取材・執筆を開始。高校での進路講演は年間で100回程度に上る。著書は累計35冊・70万部。全国の高校で年間100回以上進路講演を行う。

 

『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』(星海社新書、本体1450円)

20年以上にわたって日本全国の大学を取材し、進路選びから就職活動に至るまでを知り尽くした石渡さんが、進路にまつわる高校生のお悩みを一挙解決! 大学進学から高卒就職まで、「損しないための」進路選びを徹底解説した1冊。

編集部にあなたの声が届きます

この記事はLINE公式アカウント「高校生新聞編集部」をフォローしてくれている読者の声をもとにつくりました。あなたもぜひフォローして、記事の感想や取り上げてほしいテーマ、生活の中の悩みや困っていることなどを聞かせてください。