大学の学部・学科をどう選べばいいか分からない……そんな高校生は多いはずです。専門職志望か、総合職に就きたいか、「将来の就職」まで考えれば、進路選びのミスマッチが減らせるんです。後悔しないための学部・学科選びのポイントを、大学ジャーナリストの石渡嶺司さんに聞きました。(安永美穂)

専門職か総合職かで学部選びは変わる

―石渡さんは、将来の就職を見据えた学部・学科選びを勧めていますね。

現時点で思い描く将来のキャリアが、「専門職」志向なのか、「総合職」志向なのかによって、選ぶべき学部・学科は違ってくるからです。医師、看護師、薬剤師、栄養士、裁判官、検察官、弁護士、公認会計士、税理士、建築家、教員、特定の分野の技術者などの専門職を目指したい場合は、その職業に就くために必要な科目が学べる学部・学科を目指す必要があります。

―「総合職志向」はイメージがつきづらいです。

「将来は企業に就職したり、事務職の公務員になったりするんだろうな」とイメージを持っている人は「総合職」志向だと言えます。

就職まで視野に入れて学部や学科を選ぶのがポイント

総合職は、企業の営業職や事務職、公務員など、学部の専門性に直接関係なく幅広い仕事に従事するため、大学で学んだ内容と企業の業務内容が一致しなくてもかまいません。例えば、文学部出身の学生が、金融、IT、商社、メーカーなどに総合職として就職するのは普通にあり得ます。

総合職志向の場合は、進路が限定されずに幅広い選択ができる学部・学科へ進むとよいでしょう。

自分に合う大学を選ぶには?

総合職は学生の経験から「見込み」で採用

―総合職志向の場合、なぜ大学で学んだ内容と関係のない業界の企業にも就職できるのですか?

日本の企業は、新卒採用においては、「大学時代までにこういう経験をしてきた人であれば、入社後にこういうことができるだろう」と「見込み採用(ポテンシャル採用)」を行うのが主流です。

例えば、「高校・大学でずっとサッカーを続けてきた」学生なら、企業は「この人は体力がありそうだから、入社後も仕事を頑張ってくれそう」と見込みが立ちます。

「文学部で源氏物語の研究に取り組んだ」学生なら、企業が「この人はコツコツと勉強してきた実績があるから、入社後もコツコツと仕事をしてくれそう」と見込みが立つため、総合職として採用に至るケースが多いのです。

理系でも総合職を目指す道はある

―理系の学部・学科は専門職を目指すイメージが強いです。総合職を目指せる理系学部はありますか?

理学部、工学部、農学部は、専門職を目指すほかに、総合職として就職する道も比較的目指しやすい学部だと言えます。一方、医学部、歯学部や看護医療系の学部は、国家試験を受けて専門職として就職する人が圧倒的多数を占めるので、総合職への方向転換は難しい場合もあります。

医療系学部から総合職への方向転換は難しい(写真はイメージ)

大学や学部のLINE、インスタもチェック

―学部・学科の情報を得るためにおすすめの情報収集の手段は?

昨今は大学のホームページが充実しており、大学全体のものとは別に、学部・学科ごとのホームページが開設されている場合もあります。

学部・学科の情報を集めよう

学部・学科単位でYouTubeチャンネルを開設し、その学部・学科で学べる内容や入試制度、総合型選抜・学校推薦型選抜の面接のポイントなどについて解説した動画をアップしている大学もあります。YouTubeチャンネルは、年度の前半はあまり更新されていなくても、入試が近づくと更新頻度が上がる場合もあるため、気になる学部・学科は取りあえずチャンネル登録をしておくのをおすすめします。

LINEやインスタグラムで情報発信を行っている大学もあるため、必要に応じて友達登録やフォローをしておくとよいでしょう。

石渡嶺司さん

いしわたり・れいじ。大学ジャーナリスト。東洋大学社会学部卒。編集プロダクションなどを経て、2003年から大学・就活を主なテーマに取材・執筆を開始。高校での進路講演は年間で100回程度に上る。著書は累計35冊・70万部。全国の高校で年間100回以上進路講演を行う。

 

『夢も金もない高校生が知ると得する進路ガイド』(星海社新書、本体1450円)

20年以上にわたって日本全国の大学を取材し、進路選びから就職活動に至るまでを知り尽くした石渡さんが、進路にまつわる高校生のお悩みを一挙解決! 大学進学から高卒就職まで、「損しないための」進路選びを徹底解説した1冊。

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