「夢はあるけど現実的じゃないかも」「一握りの人しか成功できない仕事に就きたいけど周りが反対する」……そんな悩みを抱える高校生は多いはずです。進路選びの考え方を大学ジャーナリストの石渡嶺司さんに聞きました。(安永美穂)
夢がなくてもOK、大学で視野広げよう
―高校生から「将来の夢が見つからない」と焦る声が多く寄せられます。
世の中には、幼い頃からの夢をそのまま実現していく人もいれば、夢を目指す途中でより自分に合った生き方を見つける人もいます。明確な夢はなくても、大学進学や就職活動の時点で興味ある分野・業界を目指していくうちに、納得できる進路を見つける人もいます。

夢の有無で人生が決まるわけではないので、高校1・2年生の時点で将来の夢が見つかっていなくても心配する必要はありません。現時点での興味や関心をきっかけに大学を選び、大学に入ってから視野を広げていけばよいと考えましょう。
夢にこだわりすぎるリスク
―反対に「夢はあるけれど、親や先生から『現実的な進路を選べ』と言われる」人も多いです。夢と進路のバランスはどう考えればよいですか?
現時点で明確な夢がある人は、「夢を進路に直結させるのが自分にとって最善か」を客観的な視点からも検討してみましょう。夢には、実現に向けた具体的な目標を定めると「やるべきことに意欲的に取り組めるようになる効用」もあります。ですが、夢に強くこだわりすぎると、現実的な選択肢を見失うおそれもあります。
―夢にこだわって失敗する例は?
例えば、声優に憧れる高校生は多いですが、食べていけるのはごく一部のトップクラスの人だけ。なれたとしても年収100万円以下の人も少なくありません。
本来は高い能力を持っていて、大学に進学して一般企業に就職していればより多くの収入を稼げていたはずの人が、夢にこだわるあまり、低収入で苦しむおそれもあるのです。
今「結果を出してる」か否か
―夢を現実的な進路として考えてもよいか、判断する目安は?
声優、俳優、ミュージシャン、スポーツ選手など、「才能・実力が求められる職業」に就く夢をもっている場合、校外の大会やオーディションなどで結果を出しているのであれば将来の進路として検討する余地があるかもしれません。
現時点で何も結果を出しておらず、友達に「上手だからプロになれそう」と言われた程度であれば、夢は夢として持ちながらも現実的な進路を検討するのをおすすめします。

夢は叶える・諦めるの2択「じゃない」
―夢と現実的な進路が両立できるものでしょうか。
例えば、声優になりたい夢がある場合、声優のほかにもアニメに関わる仕事を調べてみると、アニメ制作会社やテレビ局、アニメの原作を生み出す出版社など、さまざまな仕事にも目が向くようになるはずです。
声優に限らず、自分の夢に関わる業界の職業を調べてみると、「夢をかなえる才能がない」と気づいた時点で他の進路にも転換しやすくなりますし、「こっちの仕事の方が向いていそうだ」と新たな発見につながる場合もあります。
―高校生は夢を描く途中の段階。可能性を閉ざさないのが大切なんですね。
夢を「叶える・諦める」の2択にするのではなく、「夢の周辺にある仕事で向いていそうなものを目指す」視点もあると、現実的な進路の選択肢が増えるものです。これからさまざまな可能性のある高校生の皆さんだからこそ、視野を広く持つのを心がけてください。
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20年以上にわたって日本全国の大学を取材し、進路選びから就職活動に至るまでを知り尽くした石渡さんが、進路にまつわる高校生のお悩みを一挙解決! 大学進学から高卒就職まで、「損しないための」進路選びを徹底解説した1冊。
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石渡嶺司さん
いしわたり・れいじ。大学ジャーナリスト。東洋大学社会学部卒。編集プロダクションなどを経て、2003年から大学・就活を主なテーマに取材・執筆を開始。高校での進路講演は年間で100回程度に上る。著書は累計35冊・70万部。全国の高校で年間100回以上進路講演を行う。