住田爽太さん(東京・佼成学園高校3年)は経営難の寺があることを知り、「自分にできることはないか」と立ち上がった。座禅体験の開催を通して力になれる道を模索している。

経営難の寺があると知り

住田さんは子どものころから伝統文化が好きで、全国の神社仏閣を巡ってきた。福島県のある寺に立ち寄った際、住職から「お寺の存続や修繕が経営的に大変だ」と聞いた。

寺の支援に取り組む住田さん(本人提供)

「お寺って当たり前に存在するものだと思っていたので、本当に驚きました。『自分にできることを考えないといけない』と思ったんです」

寺ににぎわいをもたらすには?

高1の12月から、学校のアントレプレナーシップに関する授業の一環で、寺の経営をサポートする方法がないか探究活動を始めた。週に1度の授業のほか、週末や夏休みにも活動に力を注いできた。

クラスメートや塾の友達、親といった身近な人は、「法事やお墓参りくらい」「静かすぎて入りづらい」と話していた。「お寺に興味を持ってもらうには、まずにぎわいをつくることが必要だと思いました」

外国人観光客は座禅に興味津々

高野山に旅行に行った際、外国人が座禅体験に集まっている様子を見てヒントを得、「座禅の体験会を開き、寺に人を集められないか」と考えた。

皇居周辺や新宿御苑で訪日客50人に声をかけて「座禅体験をしたいか」聞いたところ、関心を持つ声が多く「想像以上の手応えがあった」という。

「失礼だ」叱られてもめげずに通い続け

体験会を提案するため、都内の寺に話を持ちかけたが、断られた。外国人対応への不安や、住田さん自身の理解不足が理由だった。

「座禅は修行の一つ。イベントのように扱うのは失礼だ」と住職に叱られ、「正直、落ち込みました。でも言われてみて、自分が座禅の意味をわかっていなかったと気づいたんです」。

夏休みに、断られた中のから一つの寺に通い、座禅の作法や教義について学び直し、住職との会話も増えていった。

その後、英語で座禅の仕方を説明する動画を作成し、ルール等に関する参加者用の同意書も用意した。住田さんの熱意が住職に伝わり「許可をいただけたんです!」。

夏休みに寺に通い、自身も座禅を体験した(本人提供)

念願の座禅体験会開催、住職からも高評価

準備を重ね、昨年11月に座禅体験会を開催。チラシは外国人に人気の飲食店に置いてもらい、3人の参加者が集まった。「動画も同意書もちゃんと見ていて、すごく真剣に取り組んでくれました」

参加者からは「英語の動画があって安心できた」「心に残る体験だった」といった声が寄せられた。住職からも「参加者が仏教や教義に対して、敬意を払ってくださってうれしかった。外国人観光客は仏教の教えをリスペクトしてくれないだろう、という不安は先入観でした」と高評価をもらった。

全国に「座禅アンバサダー隊」を広げたい

現在、座禅を実施する寺と賛同者を増やそうと計画を進めている。外国人観光客に対する不安解消のために事例共有の場を設け、協力関係を広げていく予定だ。

同じ思いを持つ仲間を国内外に増やし、「座禅アンバサダー隊」として広げていきたいと考えている。

探究活動のヒント

【周囲の協力を得るには?】相手の立場を想像してみよう

―相手に協力を得るための行動のコツは?

活動を進めるうえで、お寺や飲食店など多くの人の協力が必要でした。どこも最初は簡単には受け入れてくれませんでした。でも、「自分の立場だったらこの話に乗るか?」って常に考えるようにしていました。

熱意を伝えるだけでなく、相手の立場やニーズを想像して行動していましたね。振り返ると、最初は自分の意見だけをお寺に伝えていました。相手がどんなお寺なのか、どんな教えを大事にしているのか理解していなかったんです。

視野が狭くならないよう、学校の先生など第三者の意見をもらうことも意識しました。

【テーマを見つけるには?】「好きなこと」からスタートしよう

―テーマ設定に悩む高校生にアドバイスをお願いします。

まずは好きなことをきっかけにしてみてください。歴史や文化が好きで、そこで出会った出来事が探究の起点になりました。やってみると意外となんとかなります。挑戦した分だけ、新しい発見がありますよ。