砂利道でガタガタ、縁石に乗り上げてドッスン。自転車通学をする生徒の中には「衝撃でお弁当が衝撃でぐちゃぐちゃに……」なんて経験をした人もいるだろう。佐久間佳乃さんと遠藤優夏さん(ともに岩手・盛岡第一高校3年)は、「自転車通学でお弁当が崩れない方法」を探究し続けてきた。
黒豆の汁がご飯に染みて「悲しくて…」
2人は約2年をかけて、自転車通学で揺れても中身が崩れない方法を探究してきた。遠藤さんの切実な悩みがきっかけだ。

「私は黒豆が好きで、お弁当によく詰めています。自転車の運転の衝撃で、お弁当が崩れ、黒豆の汁がご飯に染みてしまい、ランチタイムが悲しい時間になってしまって……」(遠藤さん)
高校1年生の6月、「チャリ通ライフを快適に!」をテーマに掲げ、佐久間さんと一緒に探究をスタートした。
免震構造に着目するも失敗
1年次は、地震の免震構造に着目し、「弁当袋に応用できないか」と免震構造が専門の大学教授に意見を聞いた。しかし、地震の揺れは横方向、自転車の揺れは縦方向であると分かり、技術の転用は困難だと判明した。
そこで2年次は、岩手県の若手人材発掘育成支援事業「HR Iwate」に参加。テック関連企業の社員などのメンターから支援を受け、加速度と衝撃の相関関係を理解していった。
加速度センサーで実験
振動から弁当を守るのに適した衝撃吸収の素材を探るべく、加速度センサーを用いた実験に取り組んだ。自作した衝撃吸収素材を装着できる巾着袋に、弁当を守りそうな素材と弁当箱を入れて、衝撃を与えた。

「耐震マットやスポンジ、ハニカム構造のクッション、凍っていない保冷剤で試したところ、保冷剤が一番衝撃を吸収しているとわかったんです」(遠藤さん)

「続ければ成果が得られる」
実験結果が思った通りに出ず、次に何をすべきか分からなくなった時期もあった。それでも、「お弁当の乱れを解決したい」という一心で、大人たちの助言を受けながら一歩ずつ取り組んだ。
「探究を通じて、うまくいかなくても続けていれば何かしらの成果が得られると学びました」(佐久間さん)

現在は、高校2年までに得た探究の成果を広く知ってもらうため、壁新聞でまとめている。「より多くの自転車通学生のお弁当が崩れずに済む未来を願っています……!」(佐久間さん)
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【探究のヒント】日常のひらめきや疑問大事に
探究活動といえば、なんとなく環境問題や貧困問題など割と真面目な(かたい?)テーマを設けなければいけない使命を感じている人もいるかもしれません。
ですが、私たちは、自分が本当に好きなもの、困っているもの、続けられそうなものなど熱意が持続するようなテーマを設定すると良いと考えます。
加えて、日常のひらめきや疑問を大切にしましょう。私も探究テーマの設定に頭を悩ませ、いろいろな探究テーマを模索しましたが、最終的には自分に一番身近な「チャリ通」について探究することにしました。
一見、くだらないと思ったことでも熱中すればとても楽しく意味のある経験になると思います。(遠藤さん)