SNSや動画を見るのがやめられず、ついつい夜更かししてしまう……なんて人は、「依存症」に陥る可能性がある。編集部に「勉強しなくてはと思っても、SNSや動画を見るのをやめられない」という声が寄せられた。SNSや動画との上手な付き合い方を、精神科医の松本俊彦さんに聞いた。(安永美穂)
「楽に見られる」ものに依存性がある
―高校生から「インスタが気になり勉強に集中できない」「動画を見ていると『あと1本だけ』を繰り返して見続けてしまう」などの声が多く寄せられています。SNSや動画がやめられなくなるのはなぜですか?
とても面白くて引き込まれるものよりも、楽に見られて気が紛れるものの方が、依存症的な症状を引き起こしやすいと言われています。
昨今、人気があるショート動画は、結論から端的に見せるものが多いのが特徴です。興味がなければスワイプして次のものにすぐ移れ、努力しなくても簡単に情報や刺激を得られるため、漫然と見続けてしまいやすいと言えるでしょう。
SNSや動画は学術的に正式な依存症とは認定されていませんが、依存症的な症状を示すケースはあると考えられます。
睡眠に支障が出たら要注意
―相談や受診が必要なレベルのSNSや動画への依存症的な症状と、その予備軍の症状の違いは?
睡眠が取れているか、日常生活に支障が出ていないかが見極めのポイントになります。夜遅くまでスマホを見ていて睡眠不足でも、登校できていて授業にも支障がなければ、まだ「予備軍」の範囲です。
しかし、スマホを持ったまま眠り、夜中も目が覚めるたびにスマホをチェックしてしまったり、朝起きられずに登校できなくなっていたりする場合は、「依存症的な症状」だと言えます。
スマホを見る時間が勉強時間を上回り、「スマホを見ている合間に勉強する」ようなペースになっている場合も、依存症的な症状だと言えるでしょう。

「スクリーンタイム」で使用時間を管理して
―SNSや動画から離れる方法は?
「スクリーンタイム」など、スマホの使用時間・使用アプリを確認できる機能を活用してください。自分が一日にどれくらいSNSや動画を見ているのかを記録し、利用時間の制限を自分で決めて設定しておきましょう。「おやすみモード」など、就寝時刻になったら通知や着信をフィルターして睡眠を妨げないようにする機能を活用することも重要です。
勉強するときは、手元にスマホを置いておくと気になって集中できなくなってしまいます。「スマホを引き出しにしまう」などの「自分ルール」を決めるのもよいでしょう。
「つらいときほど見てしまう」ことを自覚して
―依存せず、上手にSNSや動画を楽しむコツは?
まず、「人間はつらい時や疲れている時ほどSNSや動画をダラダラと見てしまいやすい」ことを知っておきましょう。学校でつらいことがあった時、受験などの心配事を抱えている時、友達とうまくいっていない時などは、スマホを見る時間が長くなりやすいことを自覚してください。その上で、自分の中で「何時以降はスマホを触らない」といったルールを決めるとよいでしょう。
リアルな世界でのやり取りよりもSNSでのやり取りの方が多くなると、スマホに依存しやすくなります。リアルとSNSでの交流が半々くらいになるように、リアルな世界で友達と話す時間を作ることも大切です。
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松本俊彦先生
まつもと・としひこ 精神科医。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長、同センター病院薬物依存症センター長。薬物依存症や自傷行為に苦しむ人などを診療する。著書に『世界一やさしい依存症入門』(河出書房新社)など。
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