読者から「冷え症」に悩まされているという声が多く寄せられた。手や足の先だけ冷たい、布団に入っても手足が冷えて眠れないなどつらい症状に襲われるが、改善策はあるのだろうか。冷えの原因と対策を、冷え症外来を営む横浜血管クリニックの林忍先生に聞いた。(木和田志乃)

高校生は「末端の冷え」が多数

―「冷え症」の原因を教えてください。

冷え症には「末端が冷えるタイプ」「下半身が冷えるタイプ」「内臓が冷えるタイプ」の3つがあります。

「末端が冷えるタイプ」は血行が悪く、血液が体の末端まで届かないので、手足が冷えてしまいます。「下半身が冷えるタイプ」は下半身だけが冷え、上半身は冷えません。ホルモンバランスの崩れによる自律神経の乱れが原因です。「内臓が冷えるタイプ」はおなかを下しやすい、風邪をひきやすいなどの症状が出ることがありますが、手足は冷えません。ストレスによる自律神経の乱れが主な原因です。

冷え症は3タイプに分かれる

―高校生世代に多い冷え症はどのタイプですか?

圧倒的に多いのが「末端が冷えるタイプ」です。「下半身が冷えるタイプ」は更年期を迎える女性、「内臓が冷えるタイプ」は中高年の男性に多く見られます。

息が上がり汗ばむ運動が効果的

―冷え症を改善するためにできることはありますか?

冷え症になりやすいかどうかは、背が高い・低いと同じで、持って生まれた体質によるところが大きいです。しかし、「生活習慣の見直し」で改善は可能ですよ。

冷え症は血行の悪さが原因なので、血液の流れをよくするのが大切です。最も効果的なのは運動。ウオーキングも効果的ですが、よりおすすめなのはジョギングです。できれば「ハアハア」と息が上がり、汗ばむ程度の運動を1日30分程度日課にしてください。運動をすると筋肉も増えます。筋肉は体の中で熱を作り出し、体を温めてくれます。

ジョギングで冷えを改善(写真はイメージ)

「黒い食べ物」を取り入れて

―効果が期待できる食べ物は?

食べ物には「体を温める性質をもつもの」「冷やす性質をもつもの」「どちらにも属さないもの」があります。

体を温める性質をもつ食べ物は、しょうが、ネギ、にんにくなどの香味野菜や、ゴボウ、レンコンなど冬に採れる根菜類があります。ほかにも黒ゴマ、黒豆、小豆、黒砂糖などの「黒いもの」を積極的に取り入れてみてください。

体を冷やす性質をもつ食べ物には、キュウリやトマトなどの暑い地域で採れる野菜や、白砂糖や合成甘味料などの白っぽいもの、水っぽいもの、スナック菓子やチョコレートなどがあります。体を冷やす食べ物はスープや汁物に入れるなど、熱を加えてみると冷えにくくなります。ただし、体を温める食べ物だけを食べればよいというわけではありません。バランスの良い食事を心がけてください。

体を温める食べ物を取り入れよう(写真はイメージ)

―飲み物についても教えてください。

寝起きは1日の中で最も水分が失われていますし、体温も下がっています。そのため、50度程度の白湯(さゆ)を一杯飲むことを習慣にしてみてください。飲みやすく、体も温まりやすいです。

おなかの冷えは大敵、腹巻きがおすすめ

―服装で気を付けることはありますか?

首は太い動脈が通っていて熱を奪われやすいので、冷気に触れないようにマフラーを巻くのは効果があります。加えて人間の体はまず内臓を温めようとします。おなかを温めるためには腹巻きも有効です。おなかが冷えていると体の中心に血液を集めようとするので、末端に血液が流れにくくなります。締め付けの強い衣類は血行を悪くしますので、避けましょう。

―それでも改善せず、つらい場合は?

病院の漢方外来で相談してもいいでしょう。血行を改善する内服薬や漢方薬、ローションを症状により処方します。

林忍(はやし・しのぶ)

医療法人慶祐会「横浜血管クリニック」理事長・院長。医学博士。慶應義塾大学外科学教室講師(非常勤)。慶應義塾大学医学部卒業。慶應義塾大学病院等で血管外科専門医として20年間勤務し、1万人以上を診療。あらゆる血管に関する診療を行う。