高齢化が進む日本。問題の一つとして取り上げられるのが「孤独死」だ。鹿児島中央高校(鹿児島)の3年生4人は、AIを活用した高齢者見守りシステムの開発を進めて、「令和6年度スーパーサイエンスハイスクール生徒研究発表会」で発表した。代表して谷口陽紀さんに、どんなシステムかを聞いた。

AI使った高齢者の見守りシステムを開発

―研究を始めたきっかけを教えてください。

「AIの力で社会を改善したい」という思いから、日本の超高齢化問題に注目しました。特にひとり暮らしの高齢者が増え、異常の発見の遅れによる孤独死が増える現状に強い危機感を抱きました。減少する若者世代に代わり、AIを活用して高齢者を支えるため、「AI×高齢者 ~見守りシステムを作る~」という研究テーマを設定しました。

研究を進める4人

―研究内容を具体的に説明してください。

「画像認識AI」を使って高齢者の生活を守るというものです。探究授業で2年生の頃から1年半かけて、画像認識AIに「異常」と「正常」を学習させ、異常を知らせるプログラムを作成。「状態異常」と判定されると、画像とともに通知が届くようにしました。動作の軽量化や、精度向上を目指してプログラムを工夫するなどしました。

異常を感知すると通知が届く

研究を重ねていくと、AIを使ったプログラムの場合でも、実用化には多くの調査が必要であり、精査と改善にも時間と労力がかかるとわかりました。研究の目標が命を守ることであるからこそ、もっとよりよく改善し続けたいです。

「知識ゼロ」から研究スタート

―大変だったことは何ですか?

私たちはほぼ知識のない状態からAIやプログラミングの研究をスタートしました。開発を進めながら必要な知識を習得し、多くの困難にも直面しましたが、プログラムが動作した時の達成感はとても大きく、これまでに経験したことのない喜びを感じました。

―研究する中で感じた面白さや楽しさを教えてください。

自分たちの好きなことだからこそ、研究を続けられました。新しいことに挑戦するたびに問題が発生し、問題を時間をかけて解決する。その繰り返しで新たな発見が生まれます。失敗を重ねるほど、成功したときの感動は大きく、研究を通じて課題解決へのアプローチ力が大いに向上したと感じます。

―今後は研究をどう進めていく予定ですか?

現在使用しているAIでは「人が横になった画像」のみで「人が倒れたかどうか」を判別しているため、寝ている状態と倒れた状態の区別をつけることができません。そこで今後の展望としては「人が倒れる動き」を認識して異常を検知できるようにしたいと思っています。

まだまだ開発中ではありますが、私たちの研究が、今後さらなる発展が予想される高齢者見守りシステムの一端を担い、一人でも多くの高齢者の命が守られることを心から願っています。