読者の高校生からLINE公式アカウント「高校生新聞編集部」に「スマホを使いすぎたせいか目が悪くなった」という声が寄せられた。近年、日本の子どもの近視は増えつつあり、スマホの普及やパソコン、タブレットを使った学習など、目を酷使する場面も多い。目が悪くなる理由や対処法を、眼科医で窪田製薬ホールディングスの最高責任者として医療機器開発に携わる窪田良先生に聞いた。(木和田志乃)
高校生の7割「近視」
―読者の高校生からは「スマホを見すぎていたせいか、目が悪くなった」という声が届きました。スマホの見過ぎは近視を進行させるのでしょうか?
スマホはもちろんですが、読書や勉強、書く作業など、「近くにあるものを集中して見ている状態が長く続くこと」が目にはよくありません。ただ高校生にとってはスマホを見る時間はどうしても長くなるので、休み休み使うことは非常に重要です。

―近視の患者が増えていると聞きました。
2023年の文部科学省の調査によると、裸眼視力が1.0に満たない高校生は約72%。子どもの近視は増加し続けています。
失明につながる可能性も
―そもそもなぜ近視になってしまうのでしょうか?
室内で近くを見る作業が多いことが大きな要因だと考えられています。もともと、人間は遠くを見る環境で暮らしていました。なので、近くばかりを見ている生活に対応できていません。
子どもから大人への成長過程で眼球も大きくなっていきます。成長するにつれ、「黒目」とも呼ばれる角膜、黒目の中にある水晶体、眼球の裏側を覆う網膜が適切な距離で成長し続けないといけません。ですが、近くばかりを見ていると眼球が後ろに伸びてしまい、近くだけに焦点が合い、遠くのものが見えにくくなると考えられています。
―近視が進むとどんな影響が現れますか?
長期的には近視は緑内障や網膜剝離など失明につながる疾患になる可能性が高いと言えます。目の健康を保ち、目の老化を防ぐためにも近視にならないように、近視が進行しないように気をつけた方がいいですね。
目を使うには「20-20-20ルール」で
―近視の進行を防ぐためにできることを教えてください。
アメリカでは「20-20-20ルール」といって、20分に1回、20秒間、20フィート(約6m)離れたところを見ることを推奨しています。
さらに1日の内、「屋外」で合計2時間以上、遠くを見る時間を作ることが大切です。残りの起きている時間で近くを見ていたとしても、近視の進行が抑制されると言われています。通学中や部活動、休み時間など最低15分くらいの細切れでいいので、目を休める時間を作ってください。

―スマホの画面の明るさは視力に影響を及ぼしますか?
屋外は室内の10倍、100倍、時には1000倍の明るさになりますが、人間の目は明るさに順応できます。スマホの画面も不快なほど明るいのは疲れ目の原因になりますが、それほど気にしなくても大丈夫です。
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くぼた・りょう 慶應義塾大学医学部卒。眼科医、医学博士。窪田製薬ホ―ルディングス株式会社代表取締役会長、 社長兼最高経営責任者(CEO)。「世界から失明を撲滅する」ことを目標にアメリカで起業。著書に『近視は病気です』(東洋経済新報社)。