児童・生徒一人一人がタブレット端末を持って学ぶなど、デジタル化が進む教育現場。ICT(情報通信技術)の活用により、これからの教育はどう変わるのか。大阪教育大学理事・副学長の峯明秀先生に聞いた。(文・野口涼、写真・大阪教育大学提供)
デジタル化が進む
—AIやデジタル技術が発展し、義務教育下では生徒ひとりひとりがタブレット端末を持ち学ぶようになりました。教育現場のデジタル化の現状を教えてください。
社会が急速に変化するなか、学校現場においてもICTの活用が必須になっています。次世代の教育スタイルとして「学びの個別最適化」が掲げられています。児童・生徒が自分の目標や進度に合った形で学んだり、自分の興味関心のある学びを選んだりすることを指します。
学びの個別最適化を、「AIやICTの活用」によって実現しようという取り組みも進んでいます。すでに多様なアプリによる個別最適化学習が導入されている小中学校も少なくありません。
―注目されているICTの活用法はありますか?
近年注目されているのが、教育データの活用です。教育データとは、児童・生徒の学びの成果物を蓄積する「学びのポートフォリオ」などから収集したビッグデータのこと。
活用例をあげると、筆記試験で正答できなかった問題のうち、解けなかった児童・生徒が多い問題は、その分野の教え方を改善できます。

新たなコースが誕生
―学校現場でICTの活用が必要不可欠になった今、教育学部の学びはどう変わりましたか?
デジタル教材を活用した学習デザインや、インターネットを活用した教材開発などを学ぶ授業を用意しています。

大阪教育大学では、今年度から「数理・データサイエンス・AI教育プログラム」を始めました。先端技術や教育データを効果的に活用できる学校教員を育成するためです。情報処理能力を身につけるために、AIの活用やデータサイエンス、データ分析を学んだり、クラウド環境の活用、情報セキュリティ対策などICT活用の基礎を身に付けます。
—社会の変容に対応するため、大阪教育大学では今年度より先進的な教員養成コースが始まりました。
令和の日本型学校教育を担う教員を養成するため、「次世代教育専攻」を教員養成課程に設けました。クラウドサービスや最新の情報機器を活用した授業の実践などを目指す「ICT教育コース」、現代的な教育課題に対応する力をつける「教育探究コース」に分かれています。
学びの個別最適化、児童生徒の成果物などを蓄積する「学びのポートフォリオ」から収集した教育データの活用や、多様な人々が活躍できる社会を目指すダイバーシティや持続可能な開発目標であるSDGsへのアプローチなど、現代の教育課題に幅広く対応できる専攻です。協働学習やワークショップ型の授業などのデザインを理論と実践によって学んでいきます。
峯明秀(みね・あきひで)
大阪教育大学理事・副学長。香川県出身。1986年香川大学教育学部卒業。高松市の公立中学校社会科教員を経て2004年から大阪教育大学に教員として着任。中学校教員在職中の1991年に鳴門教育大学大学院で学び修士課程修了。復帰後、中央教育審議会教育課程部会教科別専門部会委員を務める。2010年に広島大学大学院博士後期課程修了。博士(教育学)。 2024年4月から現職。