私は高校2年生の時、パニック障害を発症しました。前触れもなく起こる発作の恐怖から学校に行けなくなっていた私に、外に出るきっかけと勇気を与えてくれたのは、ミュージカルの舞台で観客を沸かせる推し・古川雄大さんでした。(高校生記者・そうよう=3年)

突然襲われる発作に怯える日々

パニック障害は動悸(どうき)や息苦しさ、吐き気などの「パニック発作」を繰り返す病気で、発作は前触れもなく起こります。発作の恐怖から、学校で授業を受けたり、通学バスに乗ったりすることができず、悔しさと情けなさで泣きながら家に帰る日もありました。

発作の恐怖で学校に行けず家で寝込んでいた時に、俳優の古川雄大さんの舞台映像を偶然目にし、一瞬でとりこになりました。それから過去の出演作や当時放送中のドラマなどを見て、学校に行く活力をもらいました。

推しのミュージカルに胸を打たれた

古川さんがミュージカルの主演を務めると知り、「生で見られる機会を逃したら絶対に後悔する」と思い、観劇を決意。慣れない東京の電車で、人混みに震える足を叱咤(しった)しながら、なんとか会場に着きました。

観劇した「LUPIN〜カリオストロ伯爵夫人の秘密〜」

舞台は圧巻で、2000人近くの観客を前に大舞台で一人歌う古川さんの姿が強く印象に残りました。

私はこの客席の100分の1にも満たない人数に恐れているのに、あれほど大勢の前で堂々と歌う姿はとてもまぶしく、強く胸を打たれました。脳裏に焼きついた古川さんの姿は、やがて「受け取ったものを何か行動に移したい」という思いに変わっていきました。

「人前に立つ」苦手を克服

私はパニック障害以前に、幼い頃から人前に立つのが大の苦手でした。しかし、舞台に立つ古川さんを見てから気持ちが変化。私の所属する吹奏楽部でソロコンテスト出場者の募集がかかったとき、勇気を出して顧問に出場したいと伝えました。

ソロコンはとても緊張しましたが、「勇気をくれた推しに恩返しがしたい!」という気持ちで無事に演奏を終え、自分の中で大きな自信になりました。

その後は、パニック発作が出ないかとひどく緊張することなく一人で遠くまで電車に乗り、学校も以前とほぼ同じく過ごせるようになりました。一度出した勇気は、さらに次の一歩につながることを知りました。「勇気を出してよかった」と心から思います。