松澤智朗さん(埼玉・開智未来高校3年)は、鉢に松などの植物を植え、その形を楽しむ「盆栽」をこよなく愛する。盆栽園に弟子入りして日々技術を磨き、師匠の持つプロの技をYouTubeで発信。「日本の文化である盆栽を守りたい」、そんな思いを抱きながら活動する松澤さんに、盆栽の魅力や今後の目標を聞いた。(取材・椎木里咲、写真・本人提供)

きっかけは探究活動で取り上げたSDGs

―盆栽に興味を持った時期やきっかけ、理由は何ですか?

もともと母親が盆栽を育てていて、幼いころから身近な存在でした。さらに興味を持ったきっかけは、高校1年生の8月ごろに行った探究活動でSDGsを取り上げたことです。「住み続けられるまちづくりを」というSDGsの目標の中に「世界の文化遺産や自然遺産を保護し、保っていくための努力を強化する」項目があると知りました。

松澤智朗さん。盆栽の魅力を世界に発信している

「文化に関する世論調査」(2018年度、文化庁)を調べると、「この 1 年間に、鑑賞ではなく、自ら文化芸術活動の実践をしたことはありますか」という質問に対して「文化芸術活動をまったく実践していない」「わからない」という回答が74.7パーセントもあったんです。私はそこに問題意識を持ち、身近にあった日本文化である盆栽に焦点を当てようと考えました。

私も今、10鉢くらいの盆栽を育てています。一番のお気に入りは「ゴヨウマツ」です。

―盆栽の魅力を教えてください。

盆栽は小さいものだと3cm程度のものもあり、育てやすいのが魅力です。初心者にオススメなのはシンパクという植物。水を頻繁にあげなくても枯れません。

盆栽にはいろいろ技法があるのですが、例えば根っこを切って別の鉢に植え替え、そこから新たな盆栽を作る「根伏せ」などを活用すると、数をどんどん増やせることも魅力です。そして盆栽は植物なので、もちろん光合成を行います。より多くの人が盆栽の魅力を知り、今まで植物の栽培を楽しんでこなかった人たちが盆栽を楽しむようになれば、二酸化炭素を酸素に変えて大気の質を向上させる効果も期待できるかもしれません。

盆栽園を回り弟子入りを直談判

―盆栽のことを深く知るために、盆栽園に弟子入りをしたそうですね。

1年生の10月頃から3、4件の盆栽園を回り始めて、「詳しく教えてください」と頼み込みました。初めは「真剣にやっていない、中途半端だろう」と帰されることも……。そのうち、今お世話になっている2件の盆栽園が「来てもいいよ」と。5、6回と通っていくうちに、「弟子入りしてもいいよ」と言っていただけました。

盆栽園に弟子入りして活動を行う

―盆栽園に通ううちに、課題も見つけたそうですね。

盆栽園を訪れる方がおじいちゃんばかりだったり、新型コロナウイルスがきっかけでなくなってしまった盆栽園があったり……。高齢化や後継者不足で、日本の文化である盆栽がなくなってしまう危機にあると感じました。この文化をなくしてはならないと考え、若者や海外の人に興味を持ってもらうべく、YouTubeへの動画投稿やTwitterを始めました。

YouTubeに毎日動画を投稿

―松澤さんが運営するYouTubeチャンネル「盆栽タネ」では、どんな動画を投稿していますか?

盆栽職人の技術が初心者にも伝わるような動画を上げています。1本の動画を作るのにかかる時間は2時間程度です。1年半以上毎日動画を投稿し、20言語での字幕を作成しています。チャンネル登録者は7000人を超えていて、サムネイルをシンプルにして見やすくしたり、BGMも盆栽に合わせてゆったりしたものを選んだりと工夫しています。

―盆栽園には海外からのお客さんが訪れるようになったそうですね。

YouTubeを始める前は海外からのお客さんはいませんでした。しかし、動画をきっかけにアメリカやスペイン、中国など、あらゆる国からお客さんが訪れるようになり、盆栽の購入も増えました。

盆栽を大好きにさせたい

―今後の目標を教えてください。

盆栽に興味を持たせて終わりにしてしまうのではなく、盆栽に興味を持ったその状態から大好きにまでなってもらえるよう、探究活動を続けていきます!