伊藤典夏さん(芝浦工業大学柏高校3年)は、「英単語の暗記に音読は有効か」を検証するために約1年間研究し、3月に工学院大学新宿キャンパスで行われた「関東近県SSH指定校合同発表会」で研究結果を発表した。(文・写真 椎木里咲)

フラッシュカードを使い実験

合同発表会には16校が参加し、489件の発表が行われた。伊藤さんは音読の効果を調べるため、英検準1級レベルの単語帳から選んだ15の英単語と、その日本語訳を書いたカードを用意。高校1~2年生31人を対象に、17人を「音読群」、14人を「黙読群」に振り分けて実験を行った。

音読群には15枚のフラッシュカードをそれぞれ音声付きで6秒間見せ、1単語につき3回音読させた。黙読群には、フラッシュカードを音声付きで6秒間見せるのみとした。

音読に関する研究発表をした伊藤典夏さん

毎日1回ずつ、4日間に渡って上記の暗記を行った。5日目に日本語訳を見て英単語を記入するテストを実施。結果は、15点中音読群の平均点が8.88点、黙読群の平均点が5.57点。音読群のほうが、英単語を暗記できていることが分かった。

独自の方法で正答率を計算

間違いの中でも、「スペルミス」と「1文字も書けなかった間違い」は程度が異なる。ただ「正解」「不正解」を判断するのではなく、生徒が「どのくらい暗記できたか」を反映できるよう、平均点とは別に独自の「正答率」を導く計算式を考案した。各単語の文字数からミスした文字数を引いて、すべての単語の文字数で割り、100をかけるというものだ。

「協力してくれた友達が『マルかバツかだけで判断するとかわいそうじゃない?』とアドバイスをくれました」

それぞれの「暗記の程度」を判断するため、独自の方法で正答率を計算

例えば、「happy」「Saturday」という単語でテストをし、それぞれ「hapy」「Sutarday」と間違えたとする。この場合、「happy」でミスした文字数は1、「Saturday」でミスした文字数は2だ。この2を2単語の総文字数13から引くと10。この10を総文字数13で割り100をかけると、「正答率」は76.9%となる。

この方法で計算したところ、音読群は68.8%、黙読群は46.2%となり、音読群が黙読群より約1.5倍高かった。

物事を多角的に見る力が身についた

発表をする伊藤さん

研究を通していろいろな視点で物事を見る力が身についたという。「みんなで話し合うときも平等性を考えたり、自分の考えを多角的に見てから伝えたりすることに役立つと思います」。伊藤さんは、今後も音読に関する研究を進めていく予定だ。