生まれつきの脳性まひの影響で、下半身に障がいがある髙田礼菜さん(東京・玉川聖学院高等部3年)。相模原障がい者施設殺傷事件をきっかけに、みんなが生きやすい社会づくりを人生の目標に掲げ、奮闘する姿を追った。(文・中田宗孝、写真・学校提供)
歩行にハンデ、足腰への不安抱き
普段は、靴の中に足を支えるプラスチック製の装具を入れ、つえを使わずに歩行する。「右足に体重をかけて歩くため、足にタコができやすかったり、右の靴の劣化が激しかったり。左足が内側に入り、自分の足につまずいて転ばないように気をつけて歩いています」
この先、年齢を重ねると足腰への負担が増えるかもしれない。そんな不安を抱きながら日々過ごしている。
自らのハンデは、心身への刺激にも、負担にもなっているという。「体が硬くなり、以前は伸びていた筋肉があまり伸びてないと感じると『こんなに悪くなってる』と気落ちする日もあれば、『もっとリハビリを頑張ろう!』と思うときもあります」
障がい者殺傷事件に心痛め
小6のとき、相模原障がい者施設殺傷事件(津久井やまゆり園事件)が起きた。報道で知った加害者の言動に恐怖をおぼえた。「それまで自分が障がい者だとあまり意識してなかったんです。……障がい者というだけで命を奪われた事実。こんなに死に対する恐怖を感じた出来事はありませんでした」
深い悲しみの中、自分のハンデと向き合いながら、これから何をすべきなのか、どう生きるかを深く考えた。「親元を離れ自立するときがくること、将来の仕事のこと、そして、自分のことをきちんと人に伝えるためにはどうしたらよいだろうか、と。こんな悲しい事件は二度と起きてほしくないという強い思いが根底にあります」
生きやすい社会を作りたい
高校生になり、とにかく「行動を起こす」ことをモットーに歩みだした。まずは、授業後にある終礼の時間のスピーチで、クラスメートに向けて自分の足のことを伝えた。
みんなが生きやすい社会を作るために、人生の時間を懸けたい。そのために行動に移したい。強い思いを胸に、福祉の分野でのビジネスを構想中だ。「例えば、普段づかいしたくなるような、デザイン性の高い車いすのレンタルサービスを考えています。大学進学後は、『社会福祉士』の資格を取得し、福祉の現場を見聞して、何が求められているのか感じたい」
今年8月には全国高校総合文化祭弁論部門に出場。自身のハンデのことや将来の目標、行動する大切さを発信した。
大事にしているのは前向きな気持ち。「できないことを考えてもキリがありません。それよりも誰かにしてもらったうれしいこと、自分がいかに恵まれた環境にいるのかを思い浮かべているんです」
髙田さんは「私の強みはこの足、当事者の視点」だと話す。生きやすい社会の実現に向け、「常にハンデを持った人に寄り添いながらビジネスを考えていきたいです」と意気込んでいる。