スーパーサイエンスハイスクール(SSH)指定校である錦江湾高校(鹿児島)の前原凜花さんと吉永恵(けい)さん(ともに2年)は、「BSアンテナを使って豪雨を予測する」研究を行っている。難しいと言われる「線状降水帯(積乱雲の集合体により、数時間にわたって強い雨が降る範囲)」の予測を目指す2人は、どのように研究を進めているのか。代表して、前原さんに聞いた。(写真・学校提供)
BSアンテナで豪雨災害を予測したい
2人は、雨雲の動きとBS放送の電波の強弱に関連する大量のデータを集めて「ビッグデータ化」し、豪雨予測につなげられないかと考え研究している。先輩たちの研究で「雨が降るとBS放送の受信強度が下がる」とわかったことから着想を得た。
2014年8月に広島で発生した豪雨災害を調べると、事前の天気予報は曇りだったにも関わらず、局所的豪雨を引き起こす線状降水帯が発生し、被害が出てしまったことが分かった。
「BSアンテナの世帯普及率は高く、全国で約75%。各家庭の受信強度の変化を収集し利用すれば、どこで雨が降っているか、雲がどの方向に動いているかなどを予測でき、豪雨災害時の避難の指針になるのではないかと考えました」
大量のデータをすべてグラフ化
研究は昨年10月からスタート。収集したデータは毎日2時間半、2週間かけて解析した。BS放送の電波の受信強度は刻一刻と変化するため、受信強度の数値を表示したテレビ画面をビデオカメラで撮影し、値を読み取ってグラフ化するという解析方法を取った。
「例えば3時間の観測では受信強度の値が200回ほど変化したので、200回分の変化した時刻と受信強度の値を実験ノートにメモし、エクセルに入力してグラフ化しました。日数にすると13日、合計35時間も撮影をしていて、そのうち30時間分の結果を実験ノートにまとめているので、実験ノートがデータのメモでいっぱいになりました」
2人は、先生とともに苦労して解析したデータを考察した。すると電波の受信強度が弱まるタイミングと降水量、雲の流れの間に関連性を見つけられた。
避難する人の指針になりたい
今後の目標は受信強度と降水量の観測点を増やすことと、データをもっと簡易に解析できるようにすることだ。
22年4月から気象庁による線状降水帯の予報が導入されたものの、精度はまだ低いと言われている。前原さんは「私たちのBSアンテナを使った豪雨予測システムが、線状降水帯の予報の一助となり、多くの人々の避難の指針になってほしいと考えています」と、研究の展望を述べた。