ナメクジは実は賢い? こんなテーマで福岡高校(福岡)生物部の石川希望さん(3年)と桒原香蓮さん(3年)は1年生の時から研究を進めている。8月に東京都内で開かれた第46回全国高校総合文化祭の自然科学部門では、成体と幼体の賢さを比較した研究成果を発表した。(中田宗孝)

2人は1年生のころからナメクジ(チャコウラナメクジ)の知能の有無の研究を続けてきた。「(月齢7カ月の成体の)ナメクジは『洞察力』があり、最大で2週間弱、『記憶』を持ち続けている研究成果を得ました」(石川さん)

成体の研究で得たデータをふまえ、幼体(月齢2カ月)のナメクジを研究対象とし、幼くても知能が備わっているかを調べた。

総文祭では、審査員に研究内容を説明し、他校の生徒からの質疑に答えた

子どものナメクジも記憶力あり

幼体のナメクジの記憶力を試す「好物を嫌いにさせる」実験を行った。まず、ナメクジが嫌いな食塩水と、好物のにんじんジュースを同時に与えて、にんじんジュースを嫌いにさせる。

次に、「嫌いになった」にんじんジュースと好物の小松菜ジュースを同時に与え、少し時間を置き、もう一度小松菜ジュースを与える。その時、ナメクジが小松菜ジュースを避けるかどうかを確認した。

「にんじんジュースが嫌いという『記憶』により、小松菜ジュースも嫌いになりました。この実験から幼体のナメクジにも記憶力があると判断しました」(桒原さん)

福岡高校(福岡)生物部による研究「稚ナメクジは賢いの?」

成長すると洞察する力がUP

次に、幼体のナメクジの洞察力(予測する力)を検証する実験に取り掛かった。まず、前回同様ににんじんジュースを嫌いにさせる。嫌いになったにんじんジュースと好物の小松菜ジュースを同時に与えた後、食塩水を与え、少し時間を置く。そして、もう一度小松菜ジュースを与え、ナメクジが小松菜ジュースを摂取するかどうかを確認した。

「にんじんジュースと小松菜ジュースを一緒に与えた時点で、食塩水も与えられるとナメクジは『予測』すると考えました。そんなナメクジの予測に反して、小松菜ジュースを与えてみる。すると小松菜ジュースを嫌うことなく摂取するのではと仮説を立てました」(石川さん)

研究に没頭し、ナメクジが好きになったという石川さん(左)と桒原さん。「街中でも『この辺にナメクジいるな』って、“匂い”だけで分かるんです」

もしナメクジに洞察力があれば、「にんじんジュースが与えられない=食塩水が与えられないと予測する」ので、小松菜ジュースを摂取するはずだ。だが、実験の結果、幼体のナメクジは成体と比べて小松菜ジュースを摂取する割合は低かった。このことから、幼体のナメクジは成体よりも洞察力が劣っていると分かった。

成体と幼体のナメクジの記憶力と洞察力を同じ条件で比較した今回の研究から、幼体のナメクジの記憶力は成体と同じだが、洞察力は成体より劣っており、人間の成長と同じように成体になるにつれて賢くなっていくと結論づけた。