諫早高校(長崎県)の3年生5人は、諫早市内の子ども食堂の場所や開催日時などが掲載された「いさはやこども食堂マップ」を制作した。メンバーの一人である宮﨑寧々さんに、マップの制作に至ったきっかけと、制作を通して見た子どもの貧困問題について聞いた。(椎木里咲)

子ども食堂の位置示すマップ作成

「いさはやこども食堂マップ」を制作したのは宮﨑さん、野島舞(まう)さん、池田真華さん、白石那月さん、中西結菜さんの5人。今年6~7月の2カ月かけて制作した。

「いさはやこども食堂マップ」の上半分には、子ども食堂の開催日時や連絡先をまとめた

諫早市内にある子ども食堂が一目で分かるB3サイズのマップで、諫早市役所内、地域の飲食店に掲示。市役所のホームページにも紹介されている。

「外見では分からない」貧困解決の難しさ実感

子ども食堂には貧困で苦しむ子どものみならず、様々な子どもが訪れる。マップを制作するにあたり、5人は子ども食堂でボランティアとして活動した。無償で野菜を提供してくれる人や、ボランティアで料理をするスタッフに出会い、地域の人々の温もりに触れた。

宮﨑さんが目にした貧困層の子どもたちは、身に着けているものや振る舞いが特別違うわけではなかったという。「外見では貧困で苦しむ子どもだと分かりませんでした。子どもの貧困問題は私たちの目には見えにくい。だからこそ認知されず解決も難しい」

一方で、運営費や運営場所の不足、必要としている人に情報が行き届いていないことなど、子ども食堂の抱える問題も目の当たりにした。

「貧困家庭を助けるだけでなく、地域の子どもたちがより楽しく快適に過ごせるような…、例えばつらいことがあったり、落ち込んでいたりするときに励ましてもらえるなどの機能も果たす必要があると思います」

「できたてご飯をみんなで食べる」食育の場にもなる

子ども食堂は、貧困に悩む家庭を助けるだけのものではないと言う宮崎さん。「子ども食堂はできたてのご飯をみんなで食べるという体験ができる場所。旬の食材や地元ならではの食材を使った食事を地域の方々と一緒に食べることで、食育の場にもなり得ると感じます」

「いさはやこども食堂マップ」の下半分に描かれたのは子ども食堂の所在地。男の子が笑顔で地図を覗き込むデザインだ

地域の見守りの場としての機能や、地域の子どもたちがより楽しく快適に過ごせるような場所としての機能も果たせると考える。「子どもたちの自立を支援しつつ、安心して子育てができる地域の環境づくりの第一歩としての存在意義も持っているのでは」

貧困問題を「身近な問題」として考えて

高校生が子どもの貧困問題に対してできることを聞くと「子どもの約7人に1人が相対的貧困の状況に置かれているという、日本に深刻な子どもの貧困問題があることを知ってもらいたい」という。

「お金で直接支援する力はありませんが、『重大な問題』だと社会に声を上げる力はあります。問題に関心を持って社会に発信する、それだけでも支援につながるのでは。貧困問題の怖いところは『見えないから分からない』というところ。現状を知り、身近な問題として捉えてくれる人が増えればいいなと思います」