若狭高校(福井)海洋科学科の生徒たちは、海洋保全活動に力を入れている。今年は、浜辺に流れ着いたプラスチックごみを使い、伝統工芸の技法を生かした塗箸(ぬりばし)を商品化した。海の近くで暮らす高校生は、世界で深刻化する海洋汚染問題をどう捉えているのか。生徒4人に聞いた。(椎木里咲)

浜辺のたくさんのごみに危機感

若狭高校があるのは、日本海、若狭湾の近く。松岡瑠理香さん(3年)によれば、「浜辺には洗剤の容器や漁業用のカゴなど、たくさんのごみが落ちていました。英語やハングルが書かれた容器などが流れ着いていることも多かった」という。ごみは、海洋汚染が世界中で深刻化していることを物語っていた。

浜辺にはたくさんのごみが流れ着く。左から松岡さん、時田さん、小堂さん、藤原さん。(マツ勘提供)

そんな現状を目の当たりにした松岡さんらは、ごみを回収して処分するだけでなく、箸にリサイクルすることで多くの人に関心を持ってもらおうと考えた。

箸に使う海洋プラスチックごみを回収するため、開発チームは年に3~4回ほど浜辺にごみ拾いに行く。4人がごみ拾いに行ったときは、45リットルのごみ袋4枚がすぐにいっぱいになった。

時田優空(ゆら)さん(3年)は「以前は自分も海洋汚染問題を『なんとなく』でしか意識していなかった。この現状をたくさんの人に伝えていきたい」という思いを抱いたという。

ごみが増える恐怖、リアルに感じ

海洋プラスチックごみ問題は生態系に与える影響も大きい。松岡さんは「授業で、海の生き物が餌と間違えてプラスチックを飲み込んでしまったり、最悪の場合死んでしまったりすると学びました」と話す。

藤原空来(そら)さん(2年)は「いつかは海洋プラスチックごみの量が魚の重量を上回ってしまうと学び、恐ろしさを感じた」と話す。

海に近い高校だからできること

海の近くで暮らす高校生として、時田さんは「海に近い高校だからこそ海洋汚染問題の現状を実感できると思う。自分たちが感じていることを社会や企業に発信して、海洋汚染問題をたくさんの人に知ってもらえる活動ができれば」と今後の展望を語る。卒業後は教育関係に進み、絵本などを通して幼い時期から海洋汚染問題を意識できる環境を作ることが目標だ。

「開発した箸を通して、海洋汚染問題を知ってほしい」と語る(学校提供)

小堂莉奈さん(2年)は「レジ袋を使わずにエコバッグを使うなど、できるところからなるべくプラスチックを使わないようにしていければ」と、すぐに心掛けられる海洋保全活動を挙げる。

高校生が箸を開発、海の環境保全呼びかけ

海洋プラスチックを使った「若狭塗箸」の開発にあたったのは卒業生4人と時田さん、松岡さんの6人。箸の持ち手の部分には、細かく砕いた海洋プラスチックごみが加工され散りばめられている。

今年からメンバーに加わった藤原さんと小堂さんは、商品化された箸の宣伝などを担当した。開発は地元の老舗箸メーカー「マツ勘」と行った。

海洋プラスチックごみを使って商品を作るにあたって、若狭塗箸に着目した理由は2つ。一つ目は、若狭高校がある小浜市の特産品である若狭塗箸は、全国の箸のシェア80%以上を占めていること。もう一つは、若狭塗箸がもともと小浜の美しい海を模写して作られているからだ。

開発した若狭塗箸

松岡さんは「若狭塗箸に模写されたきれいな海と対照的に、今の小浜の海にはごみがたくさんあるんやで、というのを分かってもらえるように、プラスチックごみを組み合わせて多くの人に発信できればなと思いました」と、開発した箸に込めた思いを語る。