尚志高校(福島県)の1年生、根田瑞希(みずき)さんと石渡凜音(いしわたりの)さん。2人は6月、帰宅途中に橋から飛び降りようとしている女性を発見し、救助した。大人でも適切に対処できるかわからない状況で、勇気を出して行動した2人に話を聞いた。(文・椎木里咲、写真・学校提供)
飛び降りを阻止「助けなきゃ後悔する」
「あの人、ちょっと危ないよね」「戻って、一回様子を見よう」
根田さんと石渡さんは、ソフトボール部の練習の帰り道、逢瀬川にかかる橋から飛び降りようとしている女性を救出した。一度その場を通り過ぎたが、2人で相談し現場に戻った。根田さんは女性を見て「季節に合わない服装をしていたので、おかしいと感じた」という。
2~3分、女性の様子をうかがった。すると次の瞬間、女性は橋に足をかけた。驚いた2人はとっさに女性に駆け寄り、飛び降りを阻止したという。
なぜ、ちゅうちょせず動けたのか。根田さんは「ここで助けなきゃ後悔するかなと思って。翌日の新聞で、その女性が亡くなったっていうニュースを見たら嫌だったので」と話す。
「大丈夫ですよ」と声をかけ続け
2人は、女性がヘルプマークを持っていることに気付いた。ヘルプマークには、保護者の電話番号や、薬の飲ませ方が書いてあったそうだ。しかし、記載されている番号にかけてみても電話に出ない。
「(電話に)出なかったので『大丈夫ですよ』という声をかけながら、20分くらい様子を見ました」。(石渡さん)。その間に、バッグの中に入っていた薬を女性に飲ませた。
根田さんは医療関係の仕事をしている親の影響で、ヘルプマークの存在を知っていた。2人は付近を通りがかった学生の手も借りながら、協力して女性を落ち着かせた。その後警察に連絡し、2人が女性を見つけてから約30分後に女性は保護された。状況を聞くと落ち着いて対処しているように見えるが、当時「どうしていいかわからなかった」と振り返る。
助け合うのは当たり前
2人が女性の様子をうかがっている間、気になるそぶりを見せつつも通り過ぎる大人もいた。2人は「部活で地域の方や、相手チームにあいさつをしています。だから、(見知らぬ人に)声をかけることにあんまり抵抗はなかったです」という。
「困っている人がいたら助け合うのが当たり前のことだと思っているので、恥ずかしがらずに勇気をもって声をかけ、助けてあげることができればいいと思います」と笑顔で話した。
2人は今回の行動により、警察から感謝状を贈呈された。