文部科学省よりSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を受けた学校では、科学技術についての学びを深める取り組みが行われている。神奈川県にあるSSH、横浜市立横浜サイエンスフロンティア高校の文化祭を訪ねた。
9月19日、20日に開催された「蒼煌祭」では、各種展示などのほか、様々な実験にチャレンジできる企画も登場。来場者には小・中学生も多く、在校生が解説する「科学のフシギ」に聞き入っている姿があちこちで見られた。
自作のロボットを発表
SSHならではの取り組みとしては、2年生の代表者による研究発表が両日にわたってホールで行われた。同校では、2年生が1年間かけて各自が決めた課題の研究に取り組む。毎週95分の授業1コマが課題研究の時間だが、土日や夏休みも登校して研究に打ち込む生徒が多いという。
19日に「機能分散式災害支援ロボット」について発表した山内大河さんは、「作業効率を高めるため、親機の中から2台の子機が出て作業できるようにした」と、自作のロボットを実際に操作して説明。ロボットがスムーズに動くと、会場からは歓声が上がった。
地道な実験を積み重ねて
続いて登壇した小原舞美さんは、安くて実用性のある太陽電池を作るにあたり、光をよく吸収する黒い色素を含むものとして“墨汁”に着目。種類の違う墨汁を用いて作った2つの太陽電池の性能について調べたプロセスを、実験データのグラフなども交えて発表した。
「10分ごとに200分間かけて電圧を測定する実験は大変でしたが、予想とは異なるデータが得られて新しい発見があった」(小原さん)、「イメージ通りのロボットを形にできるとうれしい。発表の機会も多く、大学教授の方の意見を伺える機会もあるのはSSHならではだと思う」(山内さん)と、二人はそれぞれに研究のやりがいを語ってくれた。
第5回高校生バイオサミットin 鶴岡
「わ和輪」の研究で文部科学大臣賞を受賞!
麹菌って、かわいい!
同校3年の山本実侑さんは、8月に開かれた第5回高校生バイオサミット in鶴岡で「わ和輪〜培地における麹菌のコロニー形成〜」と題した発表を行った。
麹菌の培地がたまたま実験室に置いてあり、リング状に広がった模様を見て「なんでこんな形になるんだろう?」と思ったのが、研究を始めたきっかけ。麹菌を育てるため、これまでに作った培地はシャーレ1000枚以上に及ぶ。
「シャーレを落とすなど、失敗したこともたくさんあります。でも、麹菌の培養液をたらした培地から翌日になって菌糸が出てくると『生きてるんだな、この子!』って愛着がわいてきて、もっと深く知りたいと思うようになりました」。
イギリス研修にも参加
山本さんは高2の終わりに、研究者が参加する学会でも発表を行った。その発表を目に留めた大学教授の勧めで、現在は大学の研究室にも足を運ぶ。また、別のテーマを研究していた高1の時はイギリス研修に参加し、英語で発表した経験もある。
「イギリスでは現地の研究者の方からたくさんの質問を受け、『高校生の話でも真剣に聞いてくださるんだ』と感動しました。SSHに通ったことで、研究を通じて外部の方々と出会う機会をたくさんいただけたのは、本当にありがたいことだと感じています」。そう語る山本さんのまっすぐな視線の先には「研究者になる」という夢がある。