長崎・松浦高校商業科の3年生は、小中学校でインターネットやSNSを安全に使うための講義を行う「サイバーセキュリティボランティア」を2019年から続けている。長崎県警察本部から委嘱を受けたことがきっかけで始まったもの。ボランティア活動が評価され、高校3年間ひときわ努力を重ねた生徒をたたえる第24回「高校生新聞社賞」にも選ばれた生徒に聞いた。(文・中田宗孝 写真・学校提供)

ネットのトラブルあわないために…児童に講義

「テレビなどでよく見る芸能人を見かけたので撮影した」

「大事故で多くの人が集まっている現場に居合わせた。大ニュースだと思って、現場を撮影した投稿をした。ただし特定の人を撮ったわけでない」

「これは肖像権の侵害になる? ならない?」

高校生が子どもたちにクイズを投げかける。

長崎・松浦高校商業科の「サイバーセキュリティボランティア」。生徒らは、インターネットを活用する際のさまざまな注意点を小中学生に伝えた

松浦高校商業科の3年生は、近隣の小中学校で、インターネット利用時の注意点などを講義する「サイバーセキュリティボランティア」の活動を行っている。サイバーセキュリティとは、パソコン、スマートフォン、タブレットといった通信機器でインターネットを利用する中で起こりうる、犯罪や炎上トラブルを未然に防ぐための対策だ。

小中学生がインターネットやSNSを日常的に使う一方で、ネットマナーやリテラシーをしっかりと学ぶ機会は少ない。そこで、彼らと年齢の近い高校生がサイバーセキュリティの重要性を呼びかけ、親しみをもって学ぶことを期待し、始まった。

高校生たちも、講義で活用する原稿・資料の作成などを通して、自らのサイバーセキュリティへの理解が進む、相乗効果を生んでいる。

専門家から学び知識たくわえ

昨年4月より、サイバーセキュリティに詳しい外部専門家や学校の先生による講義を受けてきた。「SNSに何気なく投稿した自分の言葉が他のユーザーに不快感を与える可能性も。『Instagram』や『Twitter』の使い方を一歩間違えると、とても危険なものになるとあらためて実感しました」(田郷美羽さん・3年)

生徒らは3つのグループに分かれ、週1~2回のペースで準備を始めた。グループリーダーを務めた田郷さんは、「一番考えたのは、どうすれば小学生、中学生に分かりやすくネットを使用するときの注意を伝えられるか。例えば、著作権侵害を口頭で説明しても“侵害”の部分がすぐにピンとこないかも知れない。なので、『許可を取らないとダメなんだよ』という簡単な言い回しで伝えるよう工夫しました」と話す。

田郷さん(前列中央)と「サイバーセキュリティボランティア」グループメンバーたち

クイズ投げかけ分かりやすく

生徒らによる講義は昨年9月から始まった。パワーポイントで作成した資料・イラストをスライドに投影しながら、ネットいじめ(誹謗中傷)、ゲーム依存や課金についての問題点や対応策などを丁寧に解説。「万が一、ネットトラブルに巻き込まれたら絶対に一人で悩まずに、親や先生、身近な大人に相談してください」と促した。講義中、小中学生参加型のクイズコーナーを設け、楽しませる工夫も凝らした。

小中学生にも身近な「LINEグループ」間で起こる、言葉の掛け違いから生じるトラブルを具体的な例文を挙げて紹介。「メッセージを送る前に、受け取る相手の気持ちを考えて、もう一度内容を確認してから送るように気をつけよう!」と呼びかけた。

小中学校で講義する前には、発表練習を繰り返し、他のグループと情報共有を行い、本番に臨んだ

今後は、商業科の後輩たちに引き継ぎを行い、活動は継続されていくという。