高校3年間を通じてひときわ努力を重ねた生徒をたたえる第24回「高校生新聞社賞」を受賞した高校生スイマーの山岸琴美さん(長野・飯田女子高校3年)。2021年夏の全国高校総合体育大会(インターハイ)の水泳競技・バタフライで2冠を成し遂げた。24年のパリ五輪出場を目標に掲げ、専門のバタフライのハードな練習に励んだ競泳生活について聞いた。(文・中田宗孝、写真は学校提供)
インターハイで2冠「とにかく自分を信じて」
昨夏のインターハイ水泳競技大会に出場し、女子バタフライの200mと100mの2種目で優勝を飾った。これまでも全国優勝の経験はあるが、2冠達成は初めて。さらに、地元・長野県で開催した大会での活躍とあって、その喜びもひとしおだ。「それまでの練習や大会での好調を維持して、インターハイ本番に合わせることができました」
先に出場した200mで1位になり、翌日の100mのレースを前にプレッシャーと対峙した。「『2冠を達成しなきゃ……』という思いもあって。とにかく自分を信じることを心掛けました。大会本番まで気持ちを切らさずにこれた、普段の練習ではいい泳ぎができていたと思い返しながら」
不安な気持ちに打ち勝ち、2冠を成し遂げた。「3年生のときは、高校時代の中で一番と言えるようなシーズンだったと思います」
日本トップレベルのタイムを打ち出した
インターハイまでの大会でも好結果を残して、自分の泳ぎに自信を深めてきた。昨年4月には日本選手権の200mで、初めて決勝レースまで進んだ。同大会は「東京オリンピック」の代表選手選考会も兼ねており、日本トップレベルの選手らとしのぎを削り、7位入賞を果たした。
インターハイ直前にエントリーした昨年7月の競泳大会では200mを2分7秒92の好タイムで優勝。この記録は、同種目の東京五輪日本代表に選ばれるための派遣標準記録を上回った。
中途半端な自分変えた「悔しさ」
3歳から水泳を始め、スイミングクラブのコーチの勧めもあり、中2からバタフライを専門種目に決めた。バタフライ選手としての持ち味は「大きい泳ぎ」だという。「フラットに泳ぐのではなく、私の場合は、“うねる”ように大きく泳ぐのが理想とするところです」。
“週10回”のペースで練習に励んでいる。持久力をつける、スピード力をアップさせる、個人メドレー……日によって内容の異なる練習メニューをこなす。筋力・体幹トレーニングも毎日取り組んでいる。「家に帰ったら水泳のことを考えずに過ごしています。高校生になって自分の体力、疲労感が分かってきたので、しっかりと休息をとっています」
若手実力派の競泳選手としてストイックな日々を過ごすが、「中学のころは水泳がそんなに好きじゃなかった」と明かす。「高みを目指すわけでもない。練習は頑張っていたけど、質は低かったように思う。今振り返るとすべてが中途半端でした」
だが、同じスイミングクラブの仲間が全国大会へと進み、自分だけが全国にいけなかった苦い体験を機に、意識が変わった。「水泳に向き合う姿勢を変えました。タイムやレース内容にもこだわりました。すると、高校生になり結果がついてくるようになったんです」
パリ五輪目指して
高校卒業後は、地元の長野を離れ、新たな環境で競技生活を始める。視線の先には、2024年開催のパリ五輪出場を見据える。「目の前の大会で自分の目標を一つ一つクリアし、結果を出していくことが大事だと思う。まずは国際大会の代表選手を決める選考レースです」