高校3年間を通じてひときわ努力を重ねた生徒をたたえる第24回「高校生新聞社賞」を受賞した加賀山七菜さん(神奈川・横須賀学院高校3年)。折り紙の魅力を広く発信する活動に取り組んできた。2021年8月には、自ら企画したオンラインインベントで、参加した小学生たちと折り紙を通じた交流を実現。そんな彼女に、折り紙との出会いや、折り紙イベント開催までの経緯を聞いた。(文・中田宗孝、写真・本人提供)
海外生活、折り紙で外国人と仲良しに
―加賀山さんと「折り紙」の出会いを教えてください。
幼少期は、父の仕事の都合で長く海外生活をしていました。幼稚園生だった私は、言語の壁はとても高くて、同世代の外国人とのコミュニケーションがうまく取れずにいたんです。
そんなとき、一人遊びで楽しんでいた「折り紙(ORIGAMI)」が役立ちました。私が折り紙をしていると、外国人の子どもが珍しがって「何これ?」と話し掛けられました。折り紙を折る過程を見せたときに、言葉こそ通じないのですが、幼いながら「仲良くできてる!」と感じられたんです。これが私の折り紙にまつわる原体験です。
―高校生になり、なぜ折り紙の魅力を広めようと思ったのでしょうか。
卒業後の進路を決める中で、自分の強みになる、アピールできることは何かと考えたときに、幼いころの折り紙体験を思い出しました。
折り紙はコミュニケーションツールとしても、とても魅力的なんです。私は、コロナ禍での自粛期間中、折り紙が大好きな祖母とビデオ通話をしながら一緒に折り紙を楽しみました。折り紙があれば、生活する場所が違っても、世代が違っても、それを越えた交流ができる。そんな折り紙の魅力を多くの方に伝えていきたいと思いました。
SNSで折り方を発信
―どんな活動をしたのでしょうか。
SNSで使って折り紙の魅力を発信しました。インスタグラムで自作した折り紙を投稿したり、「ハート型」や「亀」を折っている様子を撮影し、英語の字幕を付きのYouTube動画として公開したり。
また昨年8月に、鹿児島県に住む子供たち向けて、折り紙をテーマにしたオンラインイベントを企画・実施しました。
―自身が通う学校のある神奈川県周辺ではなく、なぜ鹿児島県だったのでしょう。
高2のとき、授業の任意課題として応募した「鹿児島県東串良町」の政策アイデアコンテストで3位入賞したんです。この賞をいただいた縁から、昨年7月に私の方から東串良町役場の担当者の方にコンタクトを取り、折り紙のイベントを提案しました。
とても緊張しましたが、今後の社会生活の中では、知識だけでなく行動力も求められると感じていたので思いきって挑戦してみました。
鹿児島の小学生向けにオンラインイベント
―東串良町の反応はどうだったのしょうか?
ありがたいことに、前向きに受けとめていただき、協力してもらえました。それから、東串良町の担当者の方とメールのやりとりなどを通じて、イベント内容の話し合いを重ねました。イベントでは、折り紙のほかに地域間交流もしたいなと考えていたので、私が住んでいる横浜市の観光スポットを紹介するコーナーも盛り込みました。
―昨年8月、加賀山さん主催のオンラインイベントが実現しました。
はい。東串良町の小学生18人が参加し、私は自宅からのリモートでイベントを行いました。折り紙に救われた私の海外生活のエピソードを語り、折り紙、“ものづくり”という媒介があるだけで、言葉を交わさなくてもコミュニケーションができることもあるよと小学生たちに伝えました。
ハート型の折り紙の作り方を教えながら、小学生たちに実際に折ってもらいました。ハート型の折り紙の中には、友達や家族に宛てたメッセージを書いてもらって、「折り紙で自分の気持ちを伝えよう」と話しました。
そして、自作のスライドショーを見せながら、「横浜中華街」「よこはまコスモワールド」といった私の地元を紹介しました。
日本で暮らす外国人の子どものサポートがしたい
―参加した小学生たちの様子はいかがでしたか?
どんな反応がくるのがドキドキしていたんですけど、女の子はもちろん、男の子も積極的に参加してくれてかわいらしかったですね。
コロナ禍でなければ、現地に訪れてイベントを開催したかったのですが、オンラインという最新のデバイスを活用して企画を成功できたのは、私の中で大きな経験となりました。
―今後の展望はありますか?
進学後は、日本に住む海外の子どもたちをサポートする活動ができればと考えているんです。異国で暮らす子供たちと、ものづくりを通じた異文化コミュニケーションをしていきたい。その活動の中でも折り紙を活用できれば。折り紙は、日本の伝統文化でありながら、誰でも気軽に、正方形の紙一枚で無限に楽しく遊べますから。