私立大学の入試方式は、大学・学部ごとに多種多様です。自分に合った方式を選択すれば、負担を軽減できたり、受験のチャンスを増やせたりする可能性も。併願校を決める上で知っておくとよい私立大学入試の制度や最近の傾向について、河合塾教育研究開発本部の近藤治さんに聞きました。
私立大学入試の一般選抜にはどんな種類があるの?
私立大学の入試は、出身高校の校長の推薦を受けた学生が出願できる「学校推薦型選抜」、書類・面接・小論文などで受験生の能力・適性や意欲などを総合的に評価する「総合型選抜(旧:AO入試)」、「一般選抜(旧:一般入試)」に分けられます。
このうち「一般選抜」は、各大学で試験を実施する「一般方式」と、共通テストの成績を利用する「共通テスト利用方式」に大別できます。
「一般方式」では、文系学部であれば英語・国語・地歴公民または数学から3教科、理系学部であれば英語・数学・理科の3教科を課すパターンが多くみられます。このほかに、少数の科目のみで受験できる方式、特定科目の配点比率を高くする方式、小論文や教科横断型の総合問題で選抜する方式、民間の英語資格・検定試験などを利用する方式などを設定している大学・学部もあります。
私立大学の「共通テスト利用方式」とは?
「共通テスト利用方式」はセンター試験から共通テストへの移行を機に増加傾向にあり、2021年度では全私立大学の約9割が実施しています。
「共通テスト利用方式」では、共通テストの成績のみで合否判定する方式(単独方式)のほかに、共通テストの成績と各大学・学部の個別試験の成績を合わせて合否判定する併用方式を導入している大学も多くあります。
従来のセンター試験利用方式では、必要科目数を3教科以下とする大学が主流でしたが、「共通テスト利用方式」では難関校を中心に7科目型や5教科型などの多科目型が増えつつあり、一般的に科目数が多い方式ほど倍率が低くなる傾向がみられます。共通テスト利用方式の受験料は一般方式よりも安価であることが多く、国公立大学を第一志望としている受験生にとっては私立大学のための受験対策の負担を減らせるというメリットもあります。
2022年度入試は、新型コロナウイルスの感染拡大により一般方式の試験実施が困難になった場合、私立大学でも共通テストの成績をもとに選考が行われる可能性があります。私立大学の一般方式を受験予定の人も、共通テストに出願している場合は共通テストを必ず受験しておきましょう。
受験チャンスを増やすために役立つ制度は?
私立大学では、各学部の試験日程を午前と午後に分散させることで、1日に複数の学部を併願できるようにしている大学もあります。このほか、1回の試験で複数の学部・学科に出願できる「全学部統一入試」、複数の試験日程の中から受験日・受験回数を選択できる「試験日自由選択制」、キャンパスの所在地域以外でも受験できる「地方入試」、2月初旬から中旬にかけての入試の合否が判明してから出願できる「後期入試(2期入試・3月入試)」など、受験生が受験しやすいように配慮した入試方式や制度を導入している大学・学部も数多くあります。
受験校の決定に際しては、合格した際に通いたいと思える大学を選ぶことが原則となります。併願校も精選する必要がありますが、私立大学のさまざまな入試方式や制度を賢く活用すれば、受験機会を広げることが可能です。志望大学・学部の入試方式については事前に詳しく調べ、自分に適した入試方式があれば活用を検討してみるとよいでしょう。
- 近藤治さん
- 学校法人河合塾教育研究開発本部主席研究員。河合塾入塾後、教育情報分析部門で大学入試動向分析や進学情報誌の編集に携わる。教育情報部部長、中部本部長などを経て、2021年4月から現職。マスメディアへの情報発信、生徒、保護者、高校教員対象の講演を多数実施。
- ★河合塾の大学入試情報サイトKei-Netでは、最新の入試情報を提供し受験生をサポートします。