世界の高校生は毎日どんな生活を送っているのでしょうか。今回はインドネシアのデンパサール市に住んでいる、日本が大好きなインドネシア人高校3年生マデくんに日本語でインタビューをしました。(取材 高校生記者・あんころ=2年)
部活は月曜だけ、終わったら勉強
―1日の生活の流れを教えてください。
学校は月曜日から土曜日まであります。インドネシアの始業時間は7時と早いです。朝は午前3時半に起き、授業が始まる前に3時間ほど勉強しています。ちなみに、地域や学校によって違いはありますが、男子は短髪、女子はショートカットか三つ編みが校則です。
月曜の午後のみ部活があります。部活後は4時間くらい勉強し、晩ご飯を食べたあとは読書など好きなことをして午後8時半には就寝します。

休みの日は読書や趣味の語学に費やしています。友達とチェスやゲームで遊ぶときもあります。
―ものすごく勉強熱心ですね! 部活では何をしているのですか?
日本語クラブに所属しています。学校の日本語の授業の復習、書道や華道といった日本の文化に触れています。クラブの活動をきっかけに語学にハマって、本格的に独学で日本語も英語もドイツ語も勉強し始めました。
お弁当を持ってくるのは恥ずかしい…?
―インドネシアにもお弁当の文化はあるのでしょうか?
インドネシアでもお弁当の文化はあるけれど、みんな中学生になったら持ってくるのが恥ずかしくて食堂でお昼ご飯を食べます。
僕は本を買うために貯金したいという気持ちがあったし、あまり周りを気にしない性格なので、高校でもお弁当を持ってきていました。するとクラスメイトも持ってくるようになり、ある意味弁当文化の復活に成功したのではないかなと思います(笑)

―なるほど(笑)。 好きなお菓子はありますか?
クスカというポテトチップスが好きです。材料はジャガイモではなくて、タピオカの原料であるキャッサバなので、ポテチじゃなくてキャッサチ(キャッサバチップス)って言ったほうがいいかもしれませんね。クスカは日本のポテチよりちょっと固めでおいしいです。インドネシアに来たらぜひ買ってください!
日本のお菓子だと、チョコレート味のポッキーが好きです。

夏目漱石大好き、原文で読むため日本語を勉強
―マデくんは夏目漱石が大好きだと言っていました。夏目漱石の本を読むようになったきっかけを教えてください。
中学生のとき、たまたま日本人作家のコーナーに入って『こころ』のインドネシア語訳を見つけました。外国の本も読んでみようかなと思って買いましたが、当時はただ「へー、面白い」と感じただけでした。
その後高校に入って日本語の授業があり、今度は『こころ』を原文で読んでみたいと思い、お小遣いを貯めて買いました。その時は日本語がまだそんなに理解できていなくて、必死に読んだ記憶があります。1ページごとに何度も辞書を引きました。スラスラと読めるようになりたいから日本語の勉強をもっと頑張ろうと思う、これが日本語の勉強のモチベーションになっているのです。

―夏目漱石のどんなところが好きですか?
夏目漱石の本を全巻読破したけど、実際はただただ面白いという漠然とした感想しかありませんでした。すごい感銘を受けたとか人生観が変わったといったことは、特にないのが僕の率直な感想です。
でも考えてみれば、読破したのに感動が浅いのは、18歳の僕がまだまだ未熟で、夏目漱石の本の世界と自分の経験が一致して感銘を受けるほど、過去の経験がないからなのかもしれません。
夏目漱石が面白いのは確かですけど、太宰治の作品、特に『女生徒』や『走れメロス』、『正義と微笑』などの軽やかで輝くような作品も大好きです。日本の文豪の中で、一番生き様が魅力的で素晴らしいと思うのは宮沢賢治。
でもやっぱり、一番好きなのは夏目漱石なんです。中学生のころに『こころ』を読んでいなかったら、高1のときに張り切って『こころ』を原文で読めるように日本語の勉強頑張ろう、と思うことはなかったし、他の日本の文豪の作品も読んでいなかった。言ってみれば初恋みたいなものですよ。
日本の大学で勉強したい
―将来の夢は?
まずは、今目指している日本への留学プログラムに受かって、日本の大学で勉強したいです。そして、外国人の受け入れ派遣会社や在日外国人労働者をサポートする企業、NPO・NGO団体などに就職して、外国人の受け入れ問題に対して僕にできることをしたいです。
特に最近は、よくニュースで外国人労働者について取り上げられていて、貢献したい、問題解決に力を入れたいなと強く感じています。

だから今は、受験勉強だけでなく、語学の勉強も精一杯頑張っています。
【取材後記】頑張る姿に背中を押された
私たちが普段あまり読まないような日本文学を、インドネシアの同世代が読んでいるのがとても衝撃的でした。
彼の学ぶ姿勢に胸が熱くなりました。海外の友達が夢に向かってひたむきに努力を重ね、好きなことを極め続ける姿を見ると、私も頑張らない理由がないと背中を押された気がします。インタビューに快く答えてくれたマデくんに感謝です。