世界の高校生はどのような学校生活を送っているのでしょうか。今回は、フィリピン出身のレッドさん(2年、17歳)にインタビューしました(現在はイタリアのインターナショナルスクールに通学中)。マニラでの高校生活を振り返ってもらいました。(取材・翻訳 高校生記者・もも=3年 インタビューは英語)

マニラの朝はひどい通勤ラッシュ

―フィリピンの学校制度について教えてください。

基本的に、小学校が6年、高校(日本の中学と高校にあたる)が6年間です。

高校を卒業せずに勉学を終える生徒も多いですが、高校を卒業した人の多くは、その後4年制大学に通うことが一般的です。

制服姿のレッドさん

高校の最後の2年間は、「理系(STEM)」「会計・ビジネス系」「文系」の中から1つ選ばなければならない(学校によっては職業訓練コースを選ぶこともできる)ことが特徴です。私の場合、小学校卒業時に特別な入試を受けて、理科に特化した特別な高校に進学しました。そのため、高校では自動的にSTEMコースを選択することになりました。

―1日のスケジュールは?

毎朝6時半には家を出て、兄に車で送ってもらっていました。マニラの朝は通勤ラッシュがひどく、いつも道が混雑するため、学校へは1時間ほどかかります。

午前7時半から授業が始まり、昼ごはんをはさんで午後4時半頃に終わります。授業は7~8つです。

昼食はお弁当を持参するか、学校のカフェテリアで何か買うかを選べます。授業後に課外活動があるときは、夜の7時まで学校に残っていることもありました。

3日間の文化祭、ダンスパーティーも

―どのような授業を受けていましたか?

私は小学校卒業時に入試を受け、理系にフォーカスを置いた特殊な高校に進学したため、「生物」「地学」「化学」「物理」などの理系科目の比重が比較的重めでした。

高校最後の2年間は、「生物」「化学」「物理」の中からさらに細かく科目を選ぶのですが、私は「物理」を選択しました。また、追加の選択科目として、「工学」「コンピューターサイエンス」についても授業をとり、大学レベルのことも勉強することができました。

―学校行事のようなものはありましたか?

日本の学校でいう文化祭のようなものが、3日間にわたって行われます。そこでは、クラス別にゲームや食べ物の出店を行います。

他にも、COVID-19パンデミックが始まるまでは、プロム(高校2年時にあるダンスパーティー)や卒業ダンスパーティーなども毎年行われていました。

プロムでスピーチをしているレッドさん

―課外活動などはしていましたか?

授業以外にも、生徒会の学年代表になったり、コンピューター部や水泳部に所属したりしていました。「TedX」という、学外のゲストを招待してスピーチをしてもらう企画を準備したこともあります。その時は、映画監督や環境問題に熱心なことで有名なモデルが、学校で講演をしました。

「TedX」イベントで企画準備のメンバーと。レッドさんは右から3人目

海外大進学がステータス

―フィリピンの大学受験について教えてください。

高校進学時に選択する学校によっても違いはありますが、私の通っていた高校では生徒全員が大学進学を希望していました。

小学校卒業時に「英語」「論理」「数学」「理科」の特別な試験があり、合格しなければ入学できない高校だったので、ほとんどの生徒がフィリピンで1番とされる4大トップ大学への進学を目指していました。

そのような生徒は、日本でいう塾のような学校にも通い、大学入試に備えるのが普通です。

また、フィリピン全体で、海外の大学に行くことは大きなステータスとなっていて、台湾、日本、アメリカなどの大学に進学したいと考える人も数多くいます。

―自由時間はどんなことをして過ごすのですか?

フィリピン、特に私の住んでいた都市部では、ショッピング文化がとても盛んです。ショッピングモールに友達と行くことがよくありました。他にも、映画を見たり、最近はやりの韓国風BBQを楽しんだりするのも人気です。

フィリピン・マニラの街並み。ショッピングが盛ん

日常は女性差別が根強い

―レッドさんは日本に来たことがあるということですが、その時の経験について教えてください。

首都の東京はもちろん、温泉で有名な草津にも行きました。東京の地下鉄の便利さなどの面で、日本はとても効率性の高い国だなと感じました。

―フィリピンで人気な日本のものは何ですか?

アニメがとても人気があるのはもちろんです。また、日本食はとても人気があり、ラーメン、抹茶、おすし、牛丼やかつ丼などの丼類など、さまざまな日本食が親しまれています。

日本食は大人気

―興味のある社会問題は何ですか?

フィリピン国内における「家父長制」について強い問題意識を抱いています。

フィリピンは人口の8割以上がカトリック教徒で、日常生活においても宗教の影響がとても強い国です。その上、宗教の父権的な視点が社会に深く浸透しています。

日常生活での女性差別から、政界における女性政治家への偏見など、フィリピンにおける問題の多くがこの社会構造に依拠すると言えると思います。