2月24日にロシア・プーチン政権によって始まったウクライナへの軍事侵攻は、状況悪化の様子が各メディアで伝えられています。そんな中、ロシア出身で、現在は国外で暮らす高校生、ティナさん(3年、仮名)とソーニャさん(2年、仮名)の2人がウクライナ侵攻について思うことを語ってくれました。(高校生記者・やえざくら=3年、3月6日取材)
侵略はプーチン政権の独断「国民の総意じゃない」
―ウクライナ侵攻、プーチン政権についてどんな意見を持っていますか。
ティナ:私は父親の仕事の関係でウクライナを何度か訪れたことがあります。キエフのアパートに数カ月間住んでいたので、ウクライナ人の友達も何人かいます。そのため、このような軍事攻撃には反対です。
私のようにウクライナ侵攻に異を唱えるロシア人は多数おり、「ロシアが」ウクライナを侵攻したと言っても、これはロシア国民の総意ではなく「プーチン政権の独断」だということを理解していただきたいです。
ソーニャ:8年前のクリミア半島併合の時から、このような政策には断固として反対してきました。政府は、国の政策に反対する自国民を不当に逮捕したり、プロパガンダを通してこのような政策を推し進めたりしています。ウクライナの侵攻をおしすすめるプーチンは戦争犯罪人だと考えています。
経済制裁は弱い立場のロシア人に影響が…
―経済制裁についてはどのようにお考えですか。お二人またはロシア現地にいるお友達、ご家族にはどのような影響が出ていますか。
ティナ:ロシア政府の侵攻を止めるには、経済制裁は軍事行動と並び二つしかない選択肢のうちの一つだということはわかっています。ですが、プーチンや政府高官ではなく、脆弱な立場にある低所得層のロシア人が一番影響を受けているのが、大きな懸念の一つだと思います。
もちろん、ロシア政府の横暴を止めるためになくてはならないものではあります。一方で、結局侵攻を決めた官僚ではなく、政治的、経済的に弱い立場の人が苦しむのを見るのはとても胸が痛みます。
日常生活への影響というと、制裁開始から1週間あまりしかたっていない今(取材時)はロシア国内ではまだそこまで大きな変化はないそうですが、遅かれ早かれ影響は出てくると思います。
私自身はロシア国外にいるため、家族からの送金や夏にロシアに帰国する際の交通手段などに問題があります。戦争の大きさやウクライナ人の苦労を考えると、重要ではないと思います。
「戦争は何ももたらさない」反戦活動で逮捕された友人も
―お友達やご家族はどんな意見を持っていますか。
ティナ:私の知っている人の中では、誰もこの決定を支持していません。若い世代は特に、戦争は何ももたらさず、最も苦しむのは政府高官ではなく市民だということをよく理解していて、多くの人が街頭デモで抗議活動をしています。
ソーニャ:私の友達の多くも抗議活動に参加していて、最近作られた、反戦活動を取り締まるための法律のせいで逮捕された友人も多くいます。
国外からでも少しでもできることをやろうとオンラインで抗議活動に参加していますが、私のSNSアカウントをフォローしている知人から、「危険だからやめたほうがいい」と言われたこともあります。
公平じゃない選挙、大半の貧困層は政権に関心なく
―プーチン政権がこれほどまで長く続き、国民に支持されているのはなぜだと思いますか。
ソーニャ:そもそも、ロシアの選挙の公平性はまったく担保されておらず、選挙に行かない人が多くいたり、票の操作が行われたりという権力の濫用が行われています。そのため、国民が望んでプーチンが民主的に選ばれ続けているということではないと思います。
ティナ:国内の貧富の差が大きく、数少ない裕福な人が国の富の多くを所有しているのに対し、国民の大半が貧困に苦しんでいます。「その日の食べ物を心配しなければならない人」の多くにとって、長期的な政治のことはあまり重要ではなく、政治への関心の低さも体制に変化が起こらない理由の一つだと思います。
また、年齢の高い世代の中には、ソビエト連邦崩壊後、政府の力がとても弱く国内が不安定だった時期を覚えていて、国に安定をもたらしたプーチンが失脚するとカオス状態に戻ってしまうと信じている人たちもいます。
ロシア国内では「戦争」と呼ぶことが禁止に
―ロシア政府による言論の自由への制限が厳しくなっていますが、それについてはどのように考えていますか。また、ロシア国内のメディアは見ますか。
ティナ:言論統制は以前から問題になっていました。ロシアでは、ウクライナ侵攻を「戦争」と呼ぶことなどが禁止されていて、そのような規制に反した独立系のメディアがいくつか遮断されました。私は、政府系のメディアはプロパガンダばかりで信用できないので、独立系メディアから情報を得ています。
ソーニャ:私も同じく独立系のメディア報道を信頼しています。例えば、2021年にノーベル平和賞を受賞した「ノーバヤ・ガゼータ」などです。
少人数が権力を持つ危険知って
―戦争が起きないようにするためには何が必要だと思いますか。
ティナ:プーチンの事実上の独裁を見たらわかるように、少人数が権力を持つことを許してしまうと、権力の濫用に歯止めがかからなくなります。そのため、民主主義を追求することは本当に大切だと思います。
また、平和の重要性について話し続けることも必要です。戦車や爆弾から平和は生まれません。