世界の高校生はどのような学校生活を送っているのでしょうか。今回は、チュニジアの地方出身のヌールさん(2年)(現在イタリアのインターナショナルスクールに通学)にインタビュー。チュニジアでの高校生活を振り返ってもらいました。(高校生記者・もも=3年)

中東で最も自由な国

―チュニジアってどんな国ですか?

チュニジアでは、アラビア語(チュニジア方言)が公用語ですが、フランスの植民地であった名残で、フランス語もよく使用されています。

チュニスの旧市街(写真はイメージ)

チュニジアは2010~11年に起こったジャスミン革命を始めとし、「アラブの春」と呼ばれるアラブ地域の民主化運動を引き起こしたことで有名です。

他のアラブ諸国では長期的な政治的安定にはつながらなかった「アラブの春」の唯一の成功例として、中東地域で最も「自由」な国と呼ばれています。

―チュニジアの学校制度、学校で使われている言語について簡単に教えてください。

チュニジアでは、高校入学までは全員がアラビア語で授業を受けます。日常的によく使用されるフランス語も、小学2年から勉強します。

ヌールさんの通っていた学校

高校に入学すると、基本的に1年目は大部分の授業がフランス語で行われるようになります。2年目に上がる際には、「自然科学系」「数学系」「技術系」「情報系」「文学系」「会計・経済系」などの中から専攻を選びます。

例えば、私は自然科学系のコースを選択しました。「数学」「生物」「化学」「物理」「情報科学」「フランス語」などの主要科目の授業はフランス語です。「地理」「歴史」「アラビア語」「哲学」などの授業はアラビア語で履修していました。フランス語とアラビア語の他に、英語の授業もあります。第4言語または芸術(アートか音楽)を勉強する機会もありました。

学校近くのレストランでランチ

―1日の流れを教えてください。

いつも朝6時~6時半ごろに起き、7時頃のバスに乗って15分ほどかけて登校していました。月曜から木曜までは、授業は午前8時から午後5時までです。途中に何度か休憩があります。金曜日と土曜日は、午前中のみ授業があります。学校のない日曜日や金・土曜日の午後は、数学と物理の家庭教師のもとに通っていました。

―お昼ご飯はどのように食べていましたか?

学校にも食堂はありましたが、あまりおいしくなく、衛生的でもなかったので、私はいつも学校の近くのレストランなどで食べていました。学校のお昼休みが1時間しかなかったため、ゆっくりと食事を楽しむことはあまりできませんでした。

学校の近くのレストランで食べることが多い(写真はイメージ)

窓割れ老朽化…校舎の環境が悪かった

―課外活動などは盛んでしたか?

大都市の首都・チュニスなどでは、ボランティア活動などが盛んです。しかし私の住んでいた地方では、課外活動に対しての生徒のモチベーションはとても低いものでした。ボランティア活動を主導しようとしたのですが、他の学生に活動に参加してもらうのは並大抵のことではありませんでした。

しかし、2011年の革命後にNGO(非政府組織)が合法化されてからは、特に大都市で10代の若者による活動も盛んになりました。模擬国連のような会議やボランティア活動も多く行われているそうです。

チュニジアの街並み(写真はイメージ)

―高校でいやなことはありましたか?

まず、校舎の環境があまり良くなく、窓がよく割れていたりするのが大きな問題でした。チュニジアの高校では、学生寮に住んでいる生徒も多くいます。寮の寝室も数十人規模の大部屋で、老朽化が進んでいることがよくあります。いくつかの高校の寮監をしていた母は、寮の生活環境の水準の低さを嘆いていました。

もう1つ大きな問題は、学校の制服です。通常、チュニジアの高校では男女ともに制服があります。しかし、男子生徒にはあまり口うるさく制服を強制することはないのに、女子生徒の服装についてはとても厳しかったのです。

「女性は慎み深い服装をしなければいけない」という性差別的な考えを強制されることが本当に不快でした。学校ではこのように性差別的な社会慣習を教えるのではなく、女子生徒が自分たちの権利について学ぶことのできる教育をするべきだと思います。このような風習がなくなってほしいと強く感じています。

長い…! 2週間の大学受験

―大学はどのようにして決まるのですか?

基本的に、受験生が入学できる大学は、高校4年目の最後にある「最終試験」の結果のみで決まります。「最終試験」は、高校で履修するすべての科目について、2週間にわたって行われます。高校4年間を通していい成績を収めていても、この期間に病気になったりすると再試験なども認められません。とても精神的に負担のかかる試験です。

医学部は国内で毎年200人しか合格者が出ないなど、専攻によってはとても競争率が高いです。

この試験でいい成績を収めるために、学校外で家庭教師を雇う家庭も多く、「経済格差が教育格差として顕著に表れる」という状況を生み出しています。

貧富や地方間格差、女性の権利軽視…現在は良い方向へ

―将来はどのようなことをしたいですか?

今在籍しているイタリアのインターナショナルスクールを卒業したあとは、アメリカで生体医工学を勉強したいです。

チュニジアは、他のアラブ諸国に比べてリベラルで、女性の権利の高さを謳(うた)っています。しかし人々の考え方を見ると、まだまだ発展途上だと感じられる面がとても多くあります。

また、同じチュニジア国内でも貧富の格差や、地方間格差が大きく、低所得家庭や地方では、保守的で社会に変化を起こすことに消極的な風潮があります。地方出身の私自身、女性の権利を軽視するような社会慣習に苦しんできました。

しかし、革命後は社会がよりよい方向に向かっています。特に大都市では、若者が積極的に市民運動に参加していることなど、チュニジアの未来については楽観的に見ています。

だからこそ、大学卒業後、将来的には国内でも発展の遅れている地元に帰り、チュニジア社会の発展に貢献したいと考えています。