世界の高校生はどのような学校生活を送っているのでしょうか。今回はイラク出身のアマールさん(3年)にインタビュー(現在はイタリアのインターナショナルスクールに通学中)。イラクでの高校生活はどのようなものだったのかインタビューしました。 (取材・翻訳 高校生記者・もも=3年 インタビューは英語)

学校は主に男女別、宗教やアラビア語、英語が必修

―イラクのどの地域出身ですか。

ディーワーニーヤという南部の都市出身です。

イラクの中心に位置する首都バグダッドや北部のクルディスタンに比べ、南部は保守的な傾向があり、その中でも田舎では部族の伝統的な暮らしを続けている家族も多いです。

ディーワーニーヤの、ニップルとよばれる、歴史的に有名な場所

―イラクの教育制度について教えてください。

日本と同じように、基本的に小学校は6年、中学校は3年、高校は3年です。地域によっても違いますが、学校は男子校と女子校に分かれていることが多く、私は小学校から男子校に通っていました。

イラクでは、高校1年時に文系か理系かを選び、2年時にはさらに細かく専攻を決めます。どの専攻でも、宗教、アラビア語、英語は必須です。私は生物と化学に重きを置いた学校に通っていました。

市内で最大の広場

徒歩で通学、教室の数が足りない

―イラクでの1日のタイムテーブルを教えてください。

イラクでは家から1、2キロ圏の学区内の学校に通うことが一般的で、私も徒歩圏にある高校に通っていました。午前中に学校があるときは6時半か7時頃に起き、8時から13時頃まで授業がありました。

ただ、生徒の数に対して教室の数が足りておらず、午前と午後に交代制で教室を使っていたので、午後1時から5時まで授業があることもありました。

―どのような授業を取っていましたか。

小学校の頃からアラビア語と宗教が必須でした。宗教では、道徳やイスラム教の歴史のようなことを勉強しましたが、ムスリムではない生徒は自分の宗教についての他のクラスを取るか、全く宗教の授業を受けないかのどちらかの選択肢がありました。

アラビア語では、主に「フスハー」と呼ばれる文語アラビア語の文法を勉強するのですが、日常会話で使われる「アーンミーヤ」とは全く異なり、とても複雑なのであまり好きではなかったし、成績もよくありませんでした。他には、英語、数学、物理、生物、地理、歴史なども勉強しました。

学校の集合写真

行事はなく学業のみが一般的

―学校行事にはどのようなものがありましたか。

一般的には、イラクの学校では学業以外に行事があることはあまりありません。ですが、私の学校では、私と私の友達は学校を活発化させたかったため、コンピューターサイエンスについての競技会や、生徒がさまざまな出し物を用意するカーニバルのようなイベントなど、いろいろな行事を企画しました。

アマールさんが企画したイベントの様子

―自由時間にはどのようなことをしていましたか。

普通、イラクの高校生は学校の友達が交友関係のほとんどを占めるのですが、私は学校外でもいろいろな活動をしていた関係で、イラクの他の地域に住む友人などもたくさんいました。

イラクを含め、アラブの国で10代の男の子に人気なのがサッカーで、試合観戦はもちろん、スポーツとして、また、ビデオゲームなども同世代によくたしなまれています。

日本と言えばアニメ、漫画

―イラクで、日本はどのように知られていますか。

アニメや漫画のイメージはとても強いです。

また、元イラク日本大使の岩井文男さんは、通訳者なしでイラク訛(なま)りのアラビア語を話すことでとても有名で、イラク人にとても愛されていました。フレンドリーな人柄で知られていて、なんと私もFacebook で友達としてつながっているんですよ。

―将来はどのようなことをしたいですか。

今在籍しているイタリアのインターナショナルスクールを卒業したあとは、奨学金が充実しているアメリカの大学に進学し、ビジネスを主専攻とし、政治または国際関係学を副専攻としたいと考えています。

ビジネスには中学校の頃から興味があり、いろいろと勉強したり、その知識を新卒の学生に教え就職の支援をする団体を立ち上げたりしてきました。大学を卒業してからもそのようなビジネスマネジメントの分野でイラク国外で働きたいですが、いつかはイラクに帰って政治家になり、イラクに貢献したいとも考えています。

交換留学プログラムに参加したアマールさん(写真右側)