今夏、23年ぶりのインターハイ制覇を果たした伊吹ホッケー部男子。決勝では昨年の決勝戦で0-7の大敗を喫した横田(島根)を3-1で下し、見事リベンジを果たした。選抜大会と合わせて春夏連覇を達成。強さの裏には、コミュニケーション能力を高める秘策があった。 (文・写真 白井邦彦)

今年の伊吹ホッケー部男子は、中学時代に全国制覇を果たしたメンバーがそろう。技術に関しては、昨年、新チームに代替えした時点ですでに全国トップクラスだった。加えて、冬場には雪上ラグビーで足腰を鍛え、初夏には全体練習前に地元・伊吹山の1合目まで片道約2㌔の山道を往復するなど、インターハイに向けて体力面も強化してきた。心技体の〝技と体〟に関しては何も不安はなかった。

だが、北川幸生監督(35)は〝心〟を心配していた。「守りに入ればインターハイを勝てない。その意味で、直前の近畿大会で敗れた経験は良かった」と言う。主将の山水翼瑳 (3年)=滋賀・伊吹山中出身=も「近畿大会で天理(奈良)に敗れたことで、チームが一つになれた」と振り返る。インターハイ決勝では逆転で勝利をつかんだ。メンタルの成長が優勝に結びついたのは言うまでもない。

メンタル強化には秘策もあった。それは、なんと歌とダンス。北川監督は「チームに最も必要なコミュニケーション能力を高めるには、まず選手一人一人が自分をさらけ出すこと」と語る。だから、雪深い冬場には気分転換も兼ねて、部員以外の生徒の前でダンスをさせたり、歌を歌わせたりした。「恥ずかしがらずにバカになれることは、試合の苦しい局面でチームを明るくすることにもつながる」(北川監督)

部員はとにかく明るい。「大学では、皆バラバラになるけれど、今度はライバルとして高いレベルで戦えたらうれしいし、日本代表に入って、また皆で戦いたい」と言う山水の言葉からも、仲の良さは伝わってきた。

女子 「・・・悔しい」

ホッケー部女子はインターハイで、春の選抜大会を制した羽衣学園(大阪)と準決勝で対戦、延長の末に惜敗し、3位だった。主将の笹木美里(3年)=滋賀・伊吹山中出身= は「( 試合が終わった瞬間)本当にこれで終わってしまったのかと信じられなかった」と振り返る。昨冬から3 度にわたり、強豪・安曇川(滋賀)ウエートリフティング部の門をたたき、体幹を鍛えるなどインターハイに懸けてきただけに、「本当に……悔しい一戦」と悔しさをにじませた。