聖光学院中学高校(神奈川)の宇宙開発研究会は、宇宙に思いを馳せる生徒たちが集う同校公認の団体だ。同校の卒業生で、宇宙飛行士として活動を続ける大西卓哉さんの姿に刺激を受けて発足した。代表を務める内田大智君(高校1年)に活動内容を聞いた。(中田宗孝)

OBの大西宇宙飛行士と交流

―研究会発足の経緯を教えてください。

宇宙飛行士の大西卓哉さんが、聖光学院の卒業生なんです。大西さんと交流を図る目的で、2015年に当時の生徒たちによって発足しました。

宇宙開発研究会代表の内田大智君

16年には全校生徒で、宇宙へと出発する大西さんを中継映像で見届けたんです。17年に学校で大西さんの講演が行われた際には、宇宙開発研究会のメンバーも講演運営のサポートをしました。

―普段はどのような活動を行っていますか。

宇宙開発研究会は、宇宙に関わるさまざまなことに取り組む学校公認の団体です。

文化祭では、宇宙開発に関する研究レポートや模型を作って展示しました。また、ペットボトルロケットを開発して大会に出場、「衛星設計コンテスト」にも参加しています。

2019年にペットボトルロケット大会に参加した(学校提供)

将来の夢は宇宙飛行士

―内田君が参加した動機はなんですか。

僕は6歳のときに、宇宙飛行士の山崎直子さんの活躍を目の当たりにして宇宙に夢中になったんです。そのころから将来の夢は宇宙飛行士になること。この学校を受験したのも、多くの日本人宇宙飛行士を輩出する難関大学への進学を目指せると考えたからです。

中学に入学してから宇宙開発研究会の存在を知り、メンバーになりました。

宇宙飛行士に憧れる内田君が持っている宇宙グッズ(学校提供)

―中高生メンバーで活動しているのですね。

そうです。ただ僕自身は、中学2~3年時はインドに留学をしていたんです。ですので、宇宙開発研究会のメンバーとインドの高校生をオンラインでつないで、宇宙に関する会議を企画するなど個人で活動をしていました。

インドはアジアで初めて火星周回軌道に探査機を送ることに成功した国で、その地で暮らせたことはとても貴重な経験になりました。宇宙飛行士を志すうえで必要な英会話、外国人とのコミュニケーション能力が身についたと実感しています。

―団体として目標に掲げていることはありますか。

ありません。あえて言えば「目標や活動理念がない」と掲げることで、メンバーが追求したい研究を何でもやっていいよという自由な雰囲気を作っています。

宇宙の魅力を伝える展示物を作った文化祭の一コマ(学校提供)

数学、物理、人文学、スポーツ…さまざまな分野から宇宙開発のアプローチができる。団体としての理念を明確にしてしまうと、メンバーの活動を制限する可能性があると考えているんです。僕らが惹かれる宇宙は、広く、自由な場所ですから。

実は体育会系メンバーがそろう

―どんなメンバーが集まっているのですか。

宇宙が好きだったり、仲の良い友人に誘われてだったり、単純に楽しそうだからと参加の理由はさまざまです。実は、現役メンバー全員が水泳部、陸上部、野球部など運動部と「兼部」しているのは意外性があるのではないでしょうか。僕も陸上部と兼部で、長距離走に取り組んでいます。

昨年の体育祭は宇宙開発研究会の活躍の場でした。運動部・文化部混合の部活対抗リレーが行われたのですが、僕らの脚力は運動部に引けを取りません(笑)。5団体が勝ち進む決勝レースに残りました。もちろん、文化部の中ではぶっちぎりの1位です!

体育祭リレーで大活躍(学校提供)

―今後、計画していることはありますか。

2017年に、先輩が主催して「関東科学部交流会」を開催したんです。聖光学院に関東の高校の科学部、コンピューター研究部、物理化学部を招いて、それぞれの部の研究発表を行いました。

交流会では、NASAで働く日本人エンジニアの方の講演も実現させました。僕らもこのような交流会をもっと活発に行なっていければと計画しています。

部活データ

2015年発足。メンバー10人(1年生7人、中学生3人)。週3日活動。会の通称は「SeSDA(Seiko Space Development Association)」。「模擬人工衛星搭載ペットボトルロケットの打ち上げ競技大会(IWRC)」や「衛星設計コンテスト」に出場。同校では中学1、2年の生徒は部活の兼部が禁止されているが、公認団体への参加は認められているため、中学1、2年生でも参加できる団体として活動を続ける。