松本穂香さんは、培った演技力で幅広い役柄を演じる女優ですが、新人時代には何度もオーディションに落ちたことがあったといいます。諦めずに夢をつかんだ松本さんに、高校生記者が取材し、将来の夢の決め方、高校時代にやっておいたほうがよいことなどを聞きました。(取材・高校生記者=横山千夏、構成・中田宗孝)
★松本さんの高校時代の一番の思い出は?高校生に戻れるならやりたいこととは……第2回記事はこちらから

 

将来の夢はネガティブに考えないで

―私は受験生で卒業後の進路はもちろんですが、将来の仕事にも悩んでいます。やってみたい職業が2つあり、どちらを選べばいいのか迷っていて……。

目指しているどちらの職業も好きなんですか?

―はい。今はどちらも憧れています。ただ、私にできるかどうか、向いてないかもしれないかも……。

そうなんですね。私なら「どちらの仕事のほうが自分の興味が動くかな?」と考えてみます。

「この仕事は自分に向いているのかな。向いていないじゃないかな」と、ネガティブな要素はまったく考えなくていいのかなと思います。大事にしたいのは、自分が本当にやりたいのはどちらの仕事なのか、と思います。

10代だからこそ挑戦してほしいとも思う。もしも失敗しても何度でもやり直せるから大丈夫です!

好きなことは多いほど良い

―高校生のうちにやっておいた方がいいことはありますか?

「好きなこと」をたくさん見つけて、全部取り組んでみてください。

「やってみたいな」「でもまだ(能力的にも年齢的にも)無理かな……」なんて考えが頭をよぎるかも知れません。私も何かを始める前に、まず頭に浮かぶのは「できないよ……」という、少しネガティブ思考なタイプ。なので、そう思ってしまう気持ちはよく分かります。

でも、少しでも興味を持ったなら踏み込んでみてください。高校生のうちに色々取り組んだことが、思わぬカタチで将来の夢や仕事に繋がるかも。なので、自分の好きなことが多ければ多いほどいいなって思うんです。

悔しくて泣いてもそれで終わりじゃない

―新人女優のころは、役を射止めるためのオーディションで何度も落ちた経験があると聞きました。それでも諦めずに、挑戦を続けられた原動力となったものは何でしたか?

オーディション会場では、私と同世代の女優さんが選ばれて残り、役をもらえなかった私はその場から去る……そんなことが何度もありました。

やっぱり悔しくて泣くんです。けれど、「これで終わりじゃない!」という強い気持ちは、いつも持ち続けていました。それが私の原動力になっているんです。

オーディションに落ちた悲しい気持ちは母親に聞いてもらっていたんです。それで気持ちを次へと切り替えられ、自分を取り戻しました。

実際に動いて声の感覚をつかむ

―劇場アニメ『君は彼方』では、ヒロインの女子高校生の声を担当していますね。役柄の声をどのように作りましたか。

声を収録する前に、私と監督の1対1で入念なリハーサルをしました。その時、作品に登場する他のキャラクターの声は監督が務めてくださいました。

セリフの読み合わせをするのかなと思っていたんですが、キャラクターと同じ動きをしながらセリフを発したんです。

ヒロインがベッドにドスンと飛び込むシーンでは、私が実際にソファにドスンってしながらセリフを言って声の感覚をつかんだこともありました。声優のお仕事というよりは、今回は舞台演劇に取り組んでいるように感じていましたね。

「君は彼方」より

―本番では監督からはどんな演出がありましたか。

監督から「そんなもんじゃないよね」「絵は気にしなくていいんだよ」と、言っていただきながらのアフレコでした。私も監督の期待に応えたい一心で、アニメーションに合わせて声を出すというよりは、ヒロインになりきって感情の赴くままに声を出すことを意識しました。

ふとした時の声が難しい、でも楽しい

―声の演技の大変なところを教えてください。

何かに気付いた時の声や、ふとした動きに合わせて漏れる声といった、小さなリアクションをする声の演技はとても難しいんです。実写の演技ではやらない、声優ならではの演技です。

今作もアフレコ中はとにかく必死。けれど終えてみると、声の仕事はやっぱり楽しいと思えたんです。

まわりの先輩俳優の方々からも「自分の声を作っていくことは大事だよ」と助言をいただいています。これから声の仕事をする時、自分はどんな声を出すのがベストなんだろうって考え続けていきたいです。

大切な人と向き合って思いを言葉に

―高校生が主人公の物語の映画「君は彼方」の見どころを、読者の高校生に向けてお願いします。

この作品は「伝えることの大切さ」が描かれています。

高校生のみなさんは、スマホで家族や友だちと簡単につながれる毎日を過ごしていると思います。そんな時代でも、顔と顔を向かい合わせて自分の気持ちを言葉にして伝えることは大切。

この作品を見て、勇気を出して大切な人と向き合って、自分の思いを言葉で伝えてみたいと思ってもらえたらうれしいです。

「君は彼方」より

高校生記者の取材後記 とても優しくずっと笑顔で目を見てくれた

スタジオに着いた時は、初めて見る周りの機材やスタッフさんたちにかなり圧倒されていました。

芸能人の方に取材するのは初めてで、取材の時はもちろん緊張していましたが、スタートすると少しリラックスしながらできたので良かったです。

松本さんはとても優しい方でした。私が高校生だと知った時、「高校生なの!凄いね!」とおっしゃってくれました。

取材している時もずっと笑顔で目を見てお話してくれたので、私もリラックスすることができました。松本さんに進路について伺った際、「ネガティブに考えずに、自分の興味ある方を選択してみたらいいと思う」と言ってくださって、私の中で心がスッキリしました。(横山千夏)

 

まつもと・ほのか

1997年2月5日生まれ、大阪府出身。2015年、女優デビュー。主な出演作は、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」、ドラマ「この世界の片隅に」、映画「おいしい家族」「みをつくし料理帖」など。パーソナリティを務めるTBSラジオ「新米記者・松本穂香です。」(毎週日曜12:30~13:00)が放送中。

劇場アニメ「君は彼方」

 

【ストーリー】澪は幼馴染の新の事が気になっているが、気持ちを伝えられず微妙な関係を続けていた。ある日、些細な友人の言葉をきっかけに2人はケンカをしてしまう。澪は何とか仲直りをしようと雨の中を新の元へ向かう途中、交通事故に遭ってしまう。意識を取り戻した澪が目を開けると、そこには不思議な世界が広がっていた。そこで出会ったヘンテコなガイド・ギーモンと謎の女の子・菊ちゃんと共に、澪は新の元に帰るための唯一の手段、大切な思い出の中の“忘れ物”を辿ることとなる。

配給:エレファントハウス、ラビットハウス

11月27日より全国公開。

(C)「君は彼方」製作委員会