フランスリーグでの経験を語る江畑幸子

バレーボール女子日本代表が28年ぶりに銅メダルを獲得した2012年のロンドン五輪。初出場の江畑幸子は、得点を量産して、メダル獲得の原動力となった。さらなる成長を求め、昨秋、フランスリーグの強豪RCカンヌへ移籍。10カ国の選手が一つのチームでプレーする環境で、2度目の五輪へ向け、貴重な経験を積んだ。
(文・田中夕子、写真・幡原裕治)

高校時代は「海外」考えもせず

高校生だったころ、自分が海外でプレーすることを想像したことはない。それどころか、既に全国的に名の知れた存在だったにもかかわらず、本人にはさほど欲もなかった。

 「数学の先生になるか、バレーボールを続けるか迷っていたんです。だから高校を卒業して、日立佐和リヴァーレ(現・日立リヴァーレ)に入ってからも、今の代表選手がみんな引退したころ、いつか自分も全日本に入れたらいいな、というぐらいにしか思っていませんでした」

 思惑とは裏腹に、高い打点からの巧みな攻撃力が全日本の真鍋政義監督の目にとまり、10年に代表入り。高い決定力は、全日本でも大きな武器となる。ロンドン五輪では、高さで勝る相手に対しても、ブロックにうまく当ててワンタッチを取るスパイクや、豪快なバックアタックで得点を量産した。

強豪が集う欧州に挑戦したい

初めて海外挑戦を意識したのは、ロンドン五輪の翌年だ。全日本のチームメートでもある木村沙織(東レアローズ)がトルコリーグへ移籍。世界の強豪が集まる欧州リーグの話を聞くうち、自然に「自分も海外に挑戦してみたい」と思うようになった。そして昨秋、フランスリーグ挑戦を表明した。

 日本のVリーグでは、外国人選手の登録は各チーム1人だが、フランスリーグは制限がない。江畑が移籍したRCカンヌもフランス人選手は1人だけ。あとはセルビアやアメリカなど9カ国から選手が集まっており、言葉も文化も生活習慣もバラバラ。だが、そんな環境も、天真らんまんな性格で誰とでも円滑なコミュニケーションが取れる江畑にとってはストレスを感じることもなく、「みんな親切だったので、とても楽しかった」と振り返る。

 全日本女子にとって、来夏のリオデジャネイロ五輪の目標は金メダル。選手個々のレベルアップが求められる。さらなる攻撃力向上。それは、江畑が海外挑戦を決めた理由の一つでもある。

 「フランスでは、日本なら簡単に抜けたボールもブロックで止められてしまうことがたくさんあって、相手のブロックがすごく嫌でした(笑)。でも、そういうことを体験できただけでも、海外に行ってよかったと思います」

好きなことだから頑張れる

「高校時代には考えもしなかった」という海外での経験は大きな財産になった。「私はバレーが好きだから、つらい練習も頑張れる。高校生の皆さんも、自分の好きなことを見つけて、一生懸命やってほしい。予想もしていなかった海外行きもあるから英語の授業もしっかり受けることをオススメします(笑)」

 今夏のワールドカップでは、貴重な経験を得て一段とパワーアップした江畑の姿が見られるはずだ。

えばた・ゆきこ 1989年、秋田県生まれ。聖隷女短大付高から日立佐和リヴァーレに入団。高い攻撃力を買われ、2010年に全日本初選出。世界選手権、ワールドカップに出場し、12年のロンドン五輪では銅メダル獲得に貢献。14年7月にRCカンヌへ移籍。二段トスやバックアタックなど攻撃型ウイングスパイカーとして活躍している。176センチ、68キロ。