忠願寺莉桜(ちゅうがんじ・りおん)は、高校バレー女子の強豪・東九州龍谷(大分)で屈指の高さを誇り、1年生ながらエースを務める。同校でキャプテンを務める2歳上の姉と共に戦う「最初で最後の春高」は、自慢の攻撃力を武器に挑み、ベスト8の結果を残した。(文・田中夕子、写真・中村博之)

寝る前に「一番のパフォーマンス」をイメージ

中学時代にはU16 日本代表のエースとして活躍したナンバーワンアタッカーが、高校ナンバーワンアタッカーへ。181センチのサウスポー、忠願寺莉桜は初めての春高(全日本高校選手権)を心待ちにしていた。

準々決勝敗退で夢は潰えたが、来年こそ日本一を目指す

「寝る前に、今までのどの試合よりも春高では一番いいパフォーマンスができている自分をイメージする。(春高は)自分の一番の実力を出す場所です。『まずはいいイメージを持たないと』と思っているので、一番のパフォーマンスができる自分を思い描くようにしています」

姉を追いかけて東九州龍谷へ

2歳上の姉、風來(かえら)(3年)と共に「一緒のチームで春高で優勝したい」と、姉がキャプテンを務める東九州龍谷に入学した。高校1年生ながらすでにU18日本代表にも選出されており、高さを活かした攻撃力はもちろん、サーブレシーブを含めたレシーブ力も併せ持つ。

チームを率いる相原昇監督も「ボールをコントロールする能力に長(た)けていて、サーブレシーブもできるしトスも上げられる。なおかつ攻撃も速いトスだけでなく二段トスも打ちこなせるバランスのいい選手」と称賛する。

攻撃だけでなくレシーブ力にも定評がありバランスの取れた選手であることも強み

セミプロ相手にも堂々と戦った

春高から約1カ月前の24年12月に開催された皇后杯バレーボール全日本女子選手権では、攻撃力の高さを証明して見せた。高校生ながら九州ブロックを勝ち上がり、ファイナルラウンドではセミプロ「SVリーグ」のアランマーレ山形と対戦。経験や高さ、技で勝る相手に対しても堂々の戦いぶりだった。

高さや経験で勝る相手に対し、序盤はなかなかスパイクが決まらず苦しんだが、途中で攻撃パターンをガラリと変えた。「ブロックを見て冷静に打てた」というスパイクにどんな変化を加えていたのか。姉だけでなく、父の貴博さんも元バレーボール選手で、攻撃面に関しては「父のアドバイスが大きい」と言う。

高さを活かした攻撃力のあるサウスポー。春高でも数多くのスパイク得点を記録した

「目の前にあるブロックよりももっと高いブロックが来た、と想定して、自分が思っている以上に高く、上を狙って打つようにしていました。それもただやみくもに打つだけだとアウトになるので、ちゃんとコースは見極めながら1カ所だけに打つのではなく、また別のコースにも打てる選択肢を持つ。お父さんからも『ブロックが天井まであると思って打て』と言われているので、抜くことだけでなく、どうすれば当てて出せるか考えて打つことを意識していました」

苦しい時は「お姉ちゃんが頭に浮かぶ」

日本人選手相手、しかも同世代の中では181センチ、最高到達点297センチという高さは圧倒的だ。上から打てない相手はほとんどいない。だがU18日本代表で海外のチームと対戦すれば、当然自分よりも高い相手はいくらでもいる。重ねた経験が武器になったことに加え、コートの中で「常に自分を勇気づけてくれた」姉の存在も大きいと言う。

姉の風來(右)とともに初めて春高の舞台に立った

「苦しい時にはいつもお姉ちゃんのことが頭に浮かぶんです。一緒に戦いたくて同じ高校を選んだし、『お姉ちゃんを笑顔にするために戦いたい』という気持ちも誰より強い。いつも一番必死で、チームのために全力で戦ってきた姿を見るたび、『私ももっと頑張ろう』と火がつく。一番近くにいて、一番尊敬できるのがお姉ちゃんです」

とはいえ、コートを離れれば仲の良い姉妹で、性格の違う姉をからかうように笑う。

「私はどちらかといえば感情的になることはないんですけど、お姉ちゃんは感情が抑えられないタイプ(笑)。でもそれがいい面でもあると思っています」

悔しさを来年にぶつけて

幼い頃からずっと夢見て憧れてきた春高は、姉と共に戦う「最初で最後の春高」だった。「自分にできること、最大限を尽くして、春高が終わった時にお姉ちゃんと泣き笑いしながら『一緒に戦えてよかった』と言えるように、全力で頑張りたいです」

準々決勝で共栄学園(東京)に敗れ、姉妹で日本一の夢は潰えた。だがこの悔しさを来年にぶつけ、さらなる飛躍を誓う。

ちゅうがんじ・りおん 2008年8月24日、大分県生まれ。植田南中卒。小学1年からバレーボールを始め、中学時にはU16日本代表、東九州龍谷高入学後はU18日本代表に選出されU18アジア選手権準優勝に貢献したオポジット。両親、姉妹を含めたバレーボール一家に育ち、姉の風來、妹の陽茉(ひまり)と3姉妹の次女。181センチ。