今年2 月、「サブリナ」でメジャーデビューを果たした家入レオさん。一人暮らしをしながら東京都内の高校に通う、シンガー・ソングライターだ。両親の反対を押し切って地元・福岡から上京し、夢への第一歩を踏み出した彼女に、曲に込める思いを聞いた。 (文・安永美穂、写真・玉井幹郎)

――音楽を始めたきっかけは?

音楽は「始めた」というより、「始まっていた」という感覚です。4 ~ 5歳のころから寂しいと歌っていました。壁に反響する自分の歌声を聞くと「一人じゃない」と思えて。

――曲を作り始めたのは?

13歳の時です。そのころって、友達には「よく見られたい」という気持ちがあり、本当の自分は見せられない。先生には勉強する理由を尋ねても目をそらされるだけで、不信感しか持てない。親とも衝突してばかりで、弱い自分を見せられる場所がどこにもなかったんです。

そんな時、尾崎豊さんの「15の夜」を初めて聴いて、涙が止まらなくなって。自分の抱える気持ちを、うそをつかずに表現してくれていたから。それまでも自分の思いを書き留めてはいたんですけど、曲を作ればもっとうまく表現できる気がして。

―― それで、「音楽塾ヴォイス」ヘ。

私に音楽を教えてください、とドアをドンドンとたたきました。「あなたは私に何を教えてくれるんですか?」と言ったりして。ホント、失礼ですよね(笑)。でも、「一緒に音楽をやっていこう。頑張ろう」って言葉が返ってきて、「この先生なら信じられる」と思えました。

―― 友達関係はどんな感じだった?

女子のグループって、楽しく過ごしていても「何か一つまちがえたら明日はもうここにはいられないかも」って危機感があって。盛り上げるためにジョークを言ったりしていたけど、何か言うたびに「変に思われなかったかな?」って不安でした。

――その気持ちは曲にも反映された?

はい。ある時、派手な感じの子が「寂しい」って打ち明けてくれたことがあって、不安な気持ちを隠すために強がっているのは私だけじゃないってわかったんです。本当のことを言うと浮いてしまう世界で、みんな本当の愛情を求めてる。その行き場のない思いを爆発させたのが、デビュー曲の「サブリナ」です。

――大人に反抗する気持ちは今も?

大人への反抗って、実は「助けてほしい」って気持ちの表れだったりする。でも、それは機嫌をとってほしいわけではなくて。「ここにいていいんだよ」って認めてもらったり、ギュッと抱きしめてもらったりするだけでもいいと思うんです。以前は自分に余裕がなかったから、相手の優しさも攻撃に思えて拒絶してばかりで。でも、音楽で自分をさらけ出せるようになった今は、手を差し伸べてくれるカッコいい大人もいるんだって思えるようになりました。

――新曲「Shine」に込めた思いは?

私は勉強でも運動でも平凡で、全国模試の順位を見て「私は普通以下なんだ」って、自分をあきらめかけたことがあったんです。だけど、学校でみんなと歌を歌ったあとで、友達が「家入には音楽があるからいいよね」って言ってくれて。それまでの私は自分の外にあるものばかり欲しがって、「自分には音楽がある」って気づけていなかった。でも、光るものって自分の中にあるものだから、それに自分が気づいてあげないといけない。

私自身、今でも人と比べて落ち込んでしまったり、自分らしさを見失いかけたりするけど、空に向かってこの曲を歌うと、空の光を取り込んでまた輝けるような気がして。だから、この曲を通して「私と一緒に自分らしい輝きを見つけていこう」っていう気持ちを高校生のみんなに届けたいです。――これからの夢は? 痛みを痛みとして叫び続けられるアーティストでありたい。いつか、武道館でのライブも実現させたいです!

【いえいり・れお】
1994 年12 月13 日、福岡県生まれ。高校3年生。幼少からピアノを始め、絢香やYUI を育てた「音楽塾ヴォイス」に13 歳で入塾し、作曲活動をスタート。昨年春に一人で上京し、現在は高校へ通いながら曲作りやライブ活動を行っている

取材後記

「うそのない歌を歌いたい」と、まっすぐな目で語ってくれた家入さん。苦しさや寂しさは、人を弱くするとは限らない。むしろ、きちんと向き合えば、次へ踏み出す強さになる。彼女の音楽は、その証明であるように思えた。